2016年のベストソフトには「PowerDVD 16 Ultra」を選択した。いわずと知れた、WindowsにおけるBlu-ray/DVD再生ソフトの“定番”だ。もしかすると「なぜ、いまBlu-ray再生ソフトなのか?」と思う方がいるかもしれない。たしかに──こういってはなんだが──「PowerDVD」は、単にBlu-rayやDVDを再生するだけのソフトだ。目的がシンプルであるがゆえに、たとえバージョンアップしても「所詮はBlu-ray/DVDを再生するソフト」にしかなり得ない。「そのソフトをあえて今年取り上げる意味があるのか?」と思われるのも無理はないだろう。
だが、ちょっと考えてみていただきたい。この「PowerDVD」は「16」というバージョン番号が示すことからもわかるように、これまで本当に着々とバージョンアップを続けてきたソフトだ。毎年3月・4月の時期になると、確実に新しいバージョンがリリースされる。筆者の記録では、この時期、「新着ソフトレビュー」に「PowerDVD」の新バージョンを紹介しているのは、2007年4月の「Power DVD 7 Vistaハイビジョンシアター」以来、毎年のこと。筆者にとって「春の『PowerDVD』」は、もうすでに10周年というわけだ。ここまで規則的なバージョンアップが続いているのは、某国産ワープロソフトか、ソフトの性格上、毎年新版を出す必要のある年賀状ソフトか、あるいはセキュリティ対策ソフト、そして「PowerDVD」だろう。
2016年のバージョンアップでは、いつものにように多くの新機能と画質向上が行われたほか、ユーザの使い勝手が大幅に向上した。ユーザインタフェースの点では、大画面テレビに最適化された、新たな「TVモード」が使いやすい。マウスやキーボードといった「いかにもパソコンで使っています」といった機器を使わず、あたかも家電製品を使っているかのように操作することができる。別途、提供されるスマートフォン用アプリ「PowerDVD Remote」をインストールしたiOS/Androidスマホをリモコンにして操作できるのも、スマホ全盛の昨今ならではの機能だ。
インターネットや家庭内ネットワークを駆使した再生機能も強化されている。YouTubeなどの動画サイトの動画を高画質でストリーミング再生する機能はもちろんのこと、DLNA再生では、サーバ、クライアント、コントローラ、レンダラーといったさまざまな機能をサポートするため、家庭内の各種AV機器と組み合わせて、自由自在な再生が行える。
テレビに「Chromecast」「Apple TV」が接続されていれば、テレビとパソコンとをケーブルで接続しなくても、パソコンに保存された動画・写真・音楽などをテレビで視聴することができる。「Chromecast」や「Apple TV」が対応していない動画ファイルでも、「PowerDVD」がリアルタイムに変換してくれるので、パソコン内のコンテンツをいつでも大画面のテレビで鑑賞することが可能だ。
再生機能では、4K解像度やハイレゾサウンドの再生に対応。4K再生では、残念ながらまだUHD-BDの再生には対応していないものの、4Kでエンコードされた動画ファイル(H.265/HEVC)を再生することが可能。ハイレゾサウンドでは今回のバージョンからDSD形式の音声ファイルに対応した。
冒頭で「単にBlu-ray/DVDを再生するだけ」などと失礼なことを書いたが、実際には「PowerDVD」ができること、すなわち機能数は非常に多い。さすがに毎年バージョンアップを重ねてきただけのことはある。CPUやGPUが持つ動画支援機能の活用により、少ないCPU負荷でも再生はかなりスムーズになってきており、数バージョン違うと、快適性の差は歴然。「しばらくBlu-ray/DVD再生ソフトは更新していない」という方も、たまには新しいバージョンを使ってみてはいかがだろうか。