2007年、最も印象に残ったオンラインソフトとして筆者は「Google Earth」を挙げたい……というと「いまごろなぜ?」と訝る向きもおありかと思う。実際、これまでもとても楽しくすばらしいソフトだったわけだが、今年わざわざコレを推すのはVer.4.2で登場した「Skyモード」の虜になってしまったからだ。「Google Earth」の「表示」メニューから「Skyに切り替える」を選ぶと星座名や星座線が描かれた夜空が現れる。つまり地上から見上げた星空を描き出すプラネタリウムモードに切り替わるわけだ。操作方法は通常の「Earthモード」と同じで、画面をドラッグすれば自由に星空を移動することができ、角度の変更や移動も簡単に行える。
しかし、このソフトはただ点と線の星空を眺めるだけではない。ひとたびズームアップすると、広大な宇宙空間ではスペクタクルなショウが繰り広げられているのだ。
まず軽くズームアップしたところで、最初は表示されていなかった恒星の名前やメシエカタログ、NGC(ニュージェネラルカタログ)などのラベル文字が現れる。さらによく見ると「ブラックホール」だとか「ステファンの五つ子の星団」などと書かれたラベルもあちこちに散らばっている。そこで、適当な天体へ狙いをつけてさらにぐーんとズームアップしていくと、超美麗な写真が現れるのだ。
これらの写真はNASAをはじめとするいくつかの機関から提供されたものだが、特定の超有名天体や天文現象に限らず、全天隈なくといっても過言ではないほどにきらめく星空がちりばめられている。これをマウスひとつでぐりぐり動かしてスペーストラベルを楽しめるのは快感というしかない。まるで超光速宇宙船のクルーにでもなったような気分である。
もちろん写真だけでなく、各天体の情報もしっかり収録している。天体をクリックするとポップアップウィンドウが現れて座標や距離、恒星であればスペクトル型などの情報がわかるし、「Google Earth」ではおなじみのレイヤを使っていろいろな天文現象の解説を読むこともできる。例えば「星の一生」というレイヤには、誕生から死滅までいろいろな段階にある恒星が登録されていて、星が誕生する前の状態にはじまり、赤色巨星アルデバランからかに座の超新星爆発に至るまでを写真と解説でたどることができる。
レイヤの中でも圧巻は「ハッブル ショーケース」だろう。ここには、HST(ハッブル宇宙望遠鏡)で撮影したすばらしい写真と解説が、ブラックホールとクエーサ/銀河団/星団/重力レンズなど10個のグループに分けて収録されている。これらは、最新の観測にともなってさらに充実していくに違いない(と勝手に期待している)ので、今後がますます楽しみだ。
ポップアップウィンドウ内の解説テキストは行間が詰まり気味で、せっかくの詳細な解説もやや読みづらいのが少々残念だが、とりあえずはこれだけの量の解説を日本語で読めるだけだけでもありがたいというもの。天文の知識はなくてもきれいな写真を眺めているだけで十分楽しめると思うので、星座や宇宙のことにちょっとでも興味がある人はぜひお試しいただきたい。これまでの天文シミュレータやプラネタリウムソフトとはひと味違った感激に浸れるはずだ。