筆者は天気予報がわりと気になる方で、テレビの予報番組をよく見る。基本的に屋内の仕事なので、外回りの仕事の人よりも必要性はずっと低いのだが、気候の変化はいつも気になっていて、天気予報をやる昼前どきにはテレビをつけて確認するし、夕方のニュース番組のお天気コーナーは必ずチェックしている。というわけで、ふだんの天気予報ライフは基本的に“テレビ派”だから、パソコンで常時表示するタイプの天気予報アプリは使っていない、というか、あまり必要性を感じない。知りたいときにはWebブラウザで気象サイトにアクセスして確認すればよい、と思っている。
そんな筆者だが、気象状況を「風景アニメ」で表現するという一風変わったフリーソフトに出合った。大勢の人にそのユニークな世界観にぜひ触れていただきたいと思うので、2013年のベストオンラインソフトとしてご紹介したい。
「YoWindow」は、ひと言でいうと「地名と日時を選ぶだけで、その場所のリアルな天気をアニメーションを使って教えてくれる便利なソフト」だ。現在時刻の「ライブ表示」のほか、最大3日後(有料の製品版「YoWindow Unlimited」では9日後)までの予報を知ることができる。
天気予報ツールというと、画面を占有しない小さなデスクトップアクセサリが多いと思うが、「YoWindow」は標準的なウィンドウサイズで全画面にも対応している。そしてなにより、現地の気象を伝えるためのビジュアルな情報がとても充実している。
風景の中には、その時間の雲の量や太陽の高さ、明るさがリアルに描かれる。晴れていれば朝に日が昇り、夕方には日が沈んで夜は暗くなる。
木々の揺れ具合や煙のたなびく様子、雲の運行スピードなどの描写により「風」を視覚的に表現するほか、サウンドも効果的に利用している。風力によって変わる、空気を切る風音はもちろん、例えば「村」なら牛や烏など動物の鳴き声、「海辺」なら波音までがスピーカーから流れてくる。これらは本来、天気と関係のない要素だが、視覚と聴覚によって「その時間のその場に」いる気分にさせてくれる。
風景の基本となるイラストにも味があって楽しい。標準では「村」のみが利用できるが、「YoWindow Unlimited」なら「海辺」「空港」「東洋」「空のみ」への切り替えも行える(フリー版では7日間の試用が可能)ので、地名にあった雰囲気のイラストを選択できるのだ。登録されている地名は、かなり細かいところまでカバーしていて、筆者の地元の小都市も含まれていた。しかも、地名から地理情報も参照しているようで、寒冷地では雪と氷で閉ざされた冬の風景、熱帯地域では灼熱の土の色(赤茶色)なども表現される。
気象データは、現在の気温、1日の最高・最低気温、風の向きと強さ、気圧など、基本的なところは押さえられている。天気と気温では24時間の変動をチャートで確認することも可能だ。
「今日雨が降るか、降らないかをすぐに知りたい!」といった用途であれば、太陽・雲・傘のマークを時系列に並べたチャート型の天気予報アクセサリで十分だ。一方で、日本気象協会をはじめ、民間の天気予報サービスから定時に発表される情報をネットで手に入れて、天気図や気圧、風向きのデータから自分で判断したい、という人もいるだろう。
そのどちらともまったく方向性が異なる、不思議なテイストが「YoWindow」の魅力だ。筆者は、気象を記号(マーク)でとらえるのではなくて、風景アニメで描こうという作者の発想に好感が持てる。
「数日先の天気を知りたい」とか「出張や旅行先の気象状況を調べたい」というような目的にももちろん使えるが、自宅では“癒し”のソフトとして、仕事の合間の気晴らしにいろいろな土地の天気を確認している。
個人的には、農家が描かれた「海辺」または「村」(フリー版で利用可能)が気が休まるように思う。また、風景(背景)には自分のデータも登録できるので、故郷や旅行先で撮った写真を使えば、各地の気候をよりリアルに感じることができるはずだ。その場合にはなるべくシンプルで、画面に「空」の占める割合が広いものを利用することをお勧めしたい。