毎年恒例のベストオンラインソフトだが、本年のベストにはアイデアの奇抜さと、そのアイデアを実際におもしろいゲームに仕上げたセンスのよさに敬意を表して「ぼくらの大革命!」を選ばせていただいた。このゲームは、不作続きのため年貢を下げてくれるよう、単身、王様に直訴を行った青年が主人公。だが、王様は青年の訴えを聞くどころか、逆に「むしろ、これから大事なときなので、もっと多くの税を納めてもらうことが決まった」と無情な宣告をする。自分の訴えを聞いてもらえなかったのはたった一人で来たからだろうと考えた主人公は、できるだけ多くの仲間を集めて再度、王様に直訴する決意を固める。……かくしてゲームがはじまる。
ゲームの目的は、出会った人々に話しかけ、できるだけ多くの人間を仲間にして再度王様に謁見すること。ここからがこのゲームのすごいところだ。RPGツクールVX Aceでは、パーティがマップ上を移動する際、パーティメンバーを一列に並べて隊列歩行させることができる(通常は先頭の4人まで)。「ぼくらの大革命!」では、それをさらに推し進め、なんと主人公が仲間に引き入れた王国の住民をすべて背後に引き連れながら王国内を移動するのだ。
フィールドマップ上はもちろん、建物内やダンジョンの中まで長蛇の列をなしたキャラクタが移動する姿はシュールで圧巻。ある程度以上列が長くなると当然、後方の列が先頭にいる主人公の移動を妨げることもある。列の間を通り抜けることはできない。仲間が増えれば増えるほど、移動には細心の注意が必要となる。「これ以上はどうしても移動できない」ようになった場合には、行く手を妨げている仲間から後ろのメンバーをパーティから外すことができる。パーティから外れたキャラは元いた場所に戻り、話しかけることで再度、仲間にできる。
ダンジョンや地下牢などではボスとの戦闘も可能。戦闘にはパーティメンバーのうち先頭から4人までが参加し、HPが0になったキャラはメンバーから外れ、次のキャラが自動的に戦闘に参加する。ボス以外のモンスターとの戦闘はないが、主人公がモンスターに接触すると、それぞれのモンスターによって定められた人数、パーティメンバーが減少する仕組み。
このようにして仲間を引き連れながら王国内を移動し、納得できる人数になったところで王様に謁見するとゲーム終了。引き連れていった人数により、王様の反応が変化する。集めることのできる仲間の最大数は999。王国の全住民だけでなく、犬や牛、モンスターなど、王国内に棲息する、王様以外の全キャラクタが対象となる。この点もおもしろい。最初は仲間にすることができないキャラクタも多いが、条件を満たすと、引き込めるキャラクタが次々と増えてゆく。また、パーティの通行の妨げとなる障害物もどんどん破壊できるようになる。
制作期間がわずか10日というのも驚き。ワンアイデアを見事にまとめ上げた、一見“ネタゲー”に見えるが、じっくりと楽しめる、やり込み要素満載のゲームだ。