筆者が「TweetDeck」を使いはじめたのは2011年の2月頃。それまでTwitterを二つのアカウントで利用していたのに加え、この時期にFacebookの利用も開始。さらにスマートフォンへの乗り換えとも重なったので、(1)複数のサービス、(2)複数のアカウント、(3)マルチプラットフォーム、という条件をクリアするソフトとしてチョイスした。当時はTweetDeckという会社が提供する同名のアプリケーションだったのだが、5月末ごろにTwitterがTweetDeckの買収を発表。アプリとしての行く末が案じられたが、結局はTwitterの公式アプリとして存続することとなり、つい先日新バージョンがリリースされたばかりだ。
パソコン向けの新バージョンにはGoogle Chrome用のアドオン(Chrome App)と、オーソドックスなデスクトップアプリケーション版があり、Chrome Appの場合はブラウザのタブのひとつとして使用する。簡単にいうとChrome App版はブラウザでhttp://www.tweetdeck.com/へアクセスし、Webサービスへログオンするのに対し、通常のアプリ版はブラウザを使っている感じが薄い、といった程度の違いだ。「TweetDeck」はTwitterやFacebookと連携するための設定を記録するので、「TweetDeck」にログインするだけで、登録したすべてのアカウントを利用できる。
大きな特徴はマルチカラム(複数の列)レイアウトを使って、さまざまな表示ができることと、投稿先のアカウントを簡単に選べることだろう。まずマルチカラムだが、タイムラインを表示する“Home”、メッセージ用の“Inbox”、メンションをまとめた“@”など、それぞれに専用のカラムがあり、これらをひと目でチェックできる。筆者の場合、TwitterとFacebookのアカウントを登録しているので、“Home”にはツィートのほかに、Facebookのフィードも表示されるし、“@ Me”というカラムにはツィートへのメンションやFacebookの「いいね」がついたことを通知してくれる(Facebook関連のフィードや通知にはアイコンがついているので、容易に識別できる)。
さらに、リストやメンション、お気に入りに登録したツィートなどのカラムを追加することで、タイムラインでは流れてしまって追い切れないツィートも確実にチェックできる。キーワード検索やハッシュタグで抽出した結果もカラムに登録することが可能だ。
個々のツィートに対する操作も洗練されている。リツィートやメンション、お気に入りへの登録を簡単に行えるのはもちろんだが、つぶやいたユーザのタイムラインやメンション、公開リストなどを抽出表示したり、その抽出結果を新たなカラムとして登録したりといったことが簡単にできる。
自分がつぶやく場合は、ダイアログから投稿先のアカウントを選択することが可能。複数のアカウントを選べば、TwitterとFacebookへ同じ内容を投稿することもできるし、Twitterは使わずにFacebookだけといった使い分けも簡単だ。
投稿用のダイアログでは画像の添付やダイレクトメッセージの送信も可能だが、筆者にとってはツィートの予約ができるのも大きな魅力だ。自分が不在だったり、急に多忙になったりした場合でも確実にツィートしてくれるので、サイトのメンテナンス案内や定時の案内といった、ビジネス的な用途にも使えると思う。予約ツィートには専用に“Scheduled”というカラムが割り当てられているので、予約日時や投稿済みの履歴のも簡単に確認できる。
そんなわけで、大量のツィートを効率的にチェックしたり、投稿先を使い分けたりしたい人にはとても便利なのだが、バージョンアップで失ったものもある。筆者がこれまで使ってきたVer.0.38.1では、ウィンドウサイズに応じて4カラムめまで表示したり(カラム数はディスプレイの表示解像度による制限と思う)、シングルカラムビュー(1列のみ表示)にしてデスクトップの端の方へ置いておいたりすることができたのだが、新バージョンではウィンドウサイズにかかわらず3カラム分の表示に固定される。
これにともない、ボタンの配置なども変更された結果、ウィンドウレイアウトの自由度はやや下がってしまった。メイン画面とは別に、従来は新着を知らせるポップアップメッセージが表示されていたのだが、これもなくなってしまったようだ。
また、現時点では任意のリストを作成できないらしく、ブラウザからTwitterにログインして編集するしかない。前述のように、ほかのユーザが公開しているリストを取り込んでカラムに表示することはできるし、従来のバージョンでは「Add Group/List」というコマンドが存在していたので、これはちょっと不思議な仕様だが、バージョンアップでの改善を期待したい。
もうひとつ残念な点として、Twitter以外のSNSへの対応がある。旧バージョンではFacebook以外にもMySpace/Buzz/LinkedIn/Foursqareといったサービスのアカウントを登録できたのだが、新バージョンではこれらが見あたらない。一般的なユーザとしてはFacebookさえサポートされていればさほど気にならないところかもしれないが、そのFacebookも、ウォールへの投稿やコメント、「いいね!」などの機能が利用できなくなっているようだ(その代わりに、アバターやユーザ名をクリックすると、ブラウザでそのユーザのFacebookへアクセスするようになってはいる)。
そんなわけで、いろいろなSNSを使いこなすという点ではやや魅力が薄れた感もあるが、Twitter主体に使うのなら、依然として大きな魅力を持っているのは間違いない。リストの編集やFacebookとの連携を考えると、タブの切り替えで作業が完結するChrome App版の方が通常アプリ版より便利だと思うが、基本的な使い方だけなら通常アプリ版でも十分だ。