2011年のベストゲームには、異世界を舞台にしたファンタジックな料理店経営シミュレーションゲーム「へんでろぱ!」を選びたい。理由は簡単で、キュートなグラフィック、豊富なイベントが展開するストーリー、簡単すぎず難しくもないゲームシステムと、すべての面で高いクォリティを保ちつつ、絶妙なバランスが取れていたからだ。「へんでろぱ!」は、異世界を舞台にしたファンタジックな料理店経営シミュレーションゲーム。美少女ゲームブランド「アリスソフト」作品のキャラクタが数多く登場する二次創作だが、それらの作品を知らなくても十分に楽しめる。主人公は、現代日本で高校に通う少女「北大路ヒカリ」。開けると別の世界の誰かを呼び出す「召喚ドア」をくぐってしまったヒカリは別の世界へと飛ばされてしまい、そこで「コンパンドン・ドット」という女性と知り合う。自宅が洋食屋を経営していたヒカリは、コンパンドンに現代世界の独特なセンスを認められ、「自分が開く予定の料理屋で料理を作ってくれないか」と持ちかけられる……というのがゲームの冒頭部分。
ゲームは(基本的に)、
- 料理屋「アリス亭」を運営する「シミュレーションパート」
- 休日でストーリーが進行する「イベントパート」
の二つで構成されている。1ターン=1週間で、シミュレーションパートが6日、イベントパートが1日。シミュレーションパートの流れは、6日分の食料を仕入れる→店で出す料理を決定→営業開始となる。ここで楽しいのが、お店で出す料理の開発。異世界ということもあり、ネーミングセンスがおもしろい。鶏肉を「こかとりす」、パフェを「うはあん」、ほかにも「おかゆフィーバー」「焼肉そうめん」なる怪しげなものもある。もちろん「カレーライス」「ワカメうどん」といったスタンダードなものもあるが。タイトルとなっている「へんでろぱ」はシチューのことだ。これらの料理は、材料を集めて開発する。材料は簡単に手に入るものもあれば、クエストなどでしか入らない貴重なものもあるので、作るのが難しい料理もある。これらをちまちま開発してゆく作業が、やり込み好きとしてはなかなか楽しかった。一方のイベントパートでは、膨大な量のイベントが用意されている。一つひとつのイベントが長く、登場するキャラクタも豊富。グラフィックも美麗で、アリスソフト作品をプレイしたことがある人なら、懐かしい面子のオンパレードにワクワクするだろう。彼らとのおもしろおかしい、時にミステリアスなエピソードをたっぷり楽しめる。そんな中、ひときわ目立っていたのが、コンパンドンに雇われている男性冒険者「スピア・トール」。スピアは主人公「ヒカリ」とともにオリジナルキャラクタなのだが、彼の個性がまた強烈だ。破天荒な直情タイプでおバカな発言ばかりの男だが、肝心なところで頼りになるので、プレイするうちにどんどん愛着が湧いてくる。ヒカリとスピアの淡い恋の行方(?)も一つの見どころかもしれない。
ストーリーに重点が置かれ、経営シミュレーションが陥りがちな「作業の繰り返し」を、さまざまなイベントでうまくカバーしている。1周を3〜4時間程度で遊べるのも手軽でうれしい。シミュレーションゲームが苦手な人や、あまりゲームに時間が取れない人にもお勧めできる。かといって、やり込み要素がないわけではない。シミュレーションパートはこだわろうと思えば、いくらでも深く楽しむことができるし、エンディング後のオマケコーナーや、2周目以降のクリア特典なども充実している。シミュレーションゲームを手軽に遊びたい人、ガッツリ遊びたい人、両方に対応した良作だ。