今年もたくさんのゲームをプレイしたが、「2008年のベストオンラインソフトは?」と問われたとき、「いりす症候群!」しか思いつかなかった。理由はひとつ。自分でも驚くくらいハマりこんだからだ。「いりす症候群!」は、上から降ってくる色とりどりのブロックを、同じ色同士ぶつけて消してゆく落ち物系のパズルゲーム。マウスでクリックすると、小さな白いブロックが上に向けて発射される。白いブロックは左クリックで通常発射、右クリックで強力発射。白いブロックを落ちてくるブロックに当て、軌道を変えたり、弾いたりしながら消してゆく。
一見簡単なルールに思えるが、これが意外と難しい。ゲームファイルが格納されているフォルダ内の「readme.txt」には、「操作はマウスのみ」「左クリック:発射」「右クリック:発射(強)」と書かれているだけ。自力でコツをつかむまでには、かなりの回数のゲームオーバーをくらった。それも開始早々。「即死系」とはよく言ったものだ。
物理演算エンジンによって制御されているブロックの動きは非常にリアルで、予想ができない。狙ったところにブロックがぶつかり、「連鎖」が起こって次々にブロックが消えたときの爽快感は絶大。しかしその一方で、若干狙いどころがズレただけで、あさっての方向にブロックが飛んでいってしまい、大惨事になることも。運に左右される部分も多く、「ああ、もうダメだ……!」と思っていると、ちょうどいい具合に同色のブロックが落ちてきて、最悪の事態をまぬがれたこともたびたびあった。この絶妙なバランスゆえに、「次にやったらもっといいスコアが出るかも?」という誘惑にかられ、気がついたら何十時間も連続でプレイして朝を迎えること幾数回……。この状態は現在も続いており、ふと気がつくとパソコンのデスクトップ上に作ったショートカットを叩いていたり。中毒性の高さに戦慄する。
戦慄するのはパズル部分だけでない。「いりす症候群!」には、パズルゲームのほかにノベルゲーム的要素も用意されている。一定のスコアを出すごとに、「あるばむ」という項目に美麗なCGイラストとテキストが追加され、つなぎ合わせると、とある孤島で起こった失踪事件の顛末が浮かび上がってくるのだ。この謎解きが非常によくできている。ちなみにこの物語は、「あるばむ」コーナーのイラストとテキストだけでは完結させることができない。イベントCGが追加されるタイミングで、ゲームファイルが格納されているフォルダに「かいまく.txt」をはじめとするテキストファイルが追加されてゆく。また、同フォルダ内に存在する画像データ「photo.png」も、随時更新されて変化する。これらのデータをすべて見ないことには、事件の真相に近づくことはできない。
じわじわと襲ってくる失踪事件の不気味さもさることながら、得体の知れないウサ耳少女「いりす」の存在が恐怖感をあおる。最初は「かわいい女の子だなあ」くらいの感想だった「いりす」だが、ゲームを進めてゆくにつれ、いい感じに本性を現してくる。時々ギョッとするような表情も見せてくれるので、いろいろな意味でドキドキだ。失踪事件の結末は複数用意されており、バッドエンドもあれば、もちろんハッピーエンドもある。2万点を超えると新たな展開が、さらに5万点を超すともっといいことが待っている……かもしれない。
パズルなのに、底知れぬ恐怖も体験できる稀有なゲームで、パズルゲーム好き、ホラーゲーム好きの方には、ぜひ遊んでいただきたい。ただし、ハマってしまったときの責任は取れませんが……。