今年選んだベストオンラインソフトは、アイ・オー・データ機器のRAMディスク作成ソフト「RamPhantom3」だ。コンピュータに取り付けられたメモリのうち、OSに認識されないエリアのメモリを集めてRAMディスクにできる。パソコンの記憶装置で最も高速な「メインメモリ」を使うことで、きわめて高速なRAMディスクを構築することが可能だ。2008年は、パソコンのハードウェアにとってかなりの変化が訪れた年だった。デスクトップはおろか、ノートパソコンにまで高性能なCPUが搭載され、劇的ともいえるほど低価格化したメモリによって、従来では考えられなかった大量のメモリを安価に搭載できるようになった。
その一方で、ソフトウェアの方は変化に乏しい。鳴り物入りで登場したはずのWindows Vistaは急激な普及を見せることはなく、ゆるやかに増えるのみ。むしろVistaの次世代であるWindows 7に期待が集まるほどだ。さらに、ほとんどのCPUが64bit対応となったにもかかわらず、使われているOSはほとんどが32bit版ばかり。8GBを超えるメモリを搭載しながら、実際に使えるのはそのうち3.5GB程度にしかならない、というのが現実だ。要するに「急速に進歩するハードウェアに対して、OSの普及が追いついていない」状態なのである。
「RamPhantom3」は、まさにそうしたハードウェアとソフトウェアとの進歩の差を埋めるソフトだ。このソフトは、32bit版OSでは使えないはずの3.5GBより上の領域にあるメモリをすべてRAMディスクとして使えるようにする。使い慣れた32bit版のOSのままで、64bit OSでしか使えなかったはずのメモリ領域が有効に使えるようになるわけだ。
こうしたソフトは、64bit OSなどの「次世代」にあたるソフトウェアが順調に普及さえすれば、本来なら必要のないはずのものだ。しかし、世の中そううまくは進まない。主にハードウェアのドライバが対応しないせいで、64bit OSはいまだ使いづらい状況にある。そんな状況のいまだからこそ、すべてのハードウェア資源を無駄にしないために、「RamPhantom3」のようなソフトが重宝される。まさに昨今のパソコン事情を象徴するソフトだ。