では、この速い通信であるブロードバンドによって何が手に入るのでしょう? まず、考えられるのは映像配信です。映像はデータ量が膨大なので、通信速度が低いと、どこかにしわ寄せが来ます。紙芝居のようなパタパタ動画になるか、小さな画面になるか(画面2)、長い時間をかけて映像ファイルをダウンロードするか、といったことになります。
これがブロードバンドになると、はるかに品質の高い映像を、ほぼリアルタイムといってよい感覚で楽しむことができます。この「リアルタイム」というのは、とても大事な要素です。ダウンロードには時間がかかるので、吟味してからということになりがちですが、ブロードバンドならテレビのチャネルを切り替えるように、さまざまな映像をかじり、気に入ったものをじっくり見るということができます。しかも、いつでも好きなときに好きな番組を楽しむことができるようになります(画面3)。
また、音楽配信も大きく変わるでしょう。従来の音楽配信というと「音楽を楽しみたいときに聴く」、もしくは「データをダウンロードしておいて、あとで聞く」というスタイルです。「楽しみたいときに聴く」というのは当たり前に聞こえますが、ほかに何かをしながら音楽を聴くという、日常的に行っていることが、いままではできませんでした。音楽を聴いていると、それだけで回線帯域のほとんどを使い切ってしまうので、音楽を聴きながらネットサーフィンを楽しむということはできなかったのです。ブロードバンドなら、これも解消されます。回線帯域に余裕がありますから、音楽を鳴らしながらでもWebがサクサクと表示されます。帯域の広さとは、かくも大事なものなのです。
こうした個別の要素だけでなく、Webサイトそのものも変わりつつあります。音楽が流れるなかでショッピングできたり、商品の情報をより多彩な情報でアピールするといった、従来の帯域ではできなかった試みがはじまっています。例えば簡単な製品写真だけでなく、詳細な3次元画像が流れてくれば、もっとリアルに商品が理解できます。短時間で多彩な商品を一度に閲覧できますから、比較したり、多くの商品を見ることができます。
ブロードバンドにすると、もうひとつすばらしいことがあります。それはいつでもインターネットに繋がっているという常時接続性です。常に接続しているので、インターネットが空気のような存在になります。これは大きな意味を持っています。
従量課金制では、通信時間が気になってなかなかWebの情報に集中することができない、という経験はありませんか? いったんダウンロードして……といったテクニックを使うようになりますが、やはり面倒です。Webのように垣根のないサービスでは、ひとつのサイトですべてが済むということは多くありません。書籍のように目的にかなう情報をじっくり読み込むよりも、さまざまなWebサイトにある情報の断片を組み合わせ、ひとつの情報を自分の中で組み立てるというスタイルの方が向いています。
インターネットで提供される情報、例えば天気予報やTV番組表、ニュースといったものは、ダイヤルアップユーザには縁遠いもの。実は、筆者もそうでした。「あんなもの何がうれしいんだ? テレビがあるし新聞がある、わざわざインターネットで見なくても……」というのが正直な感想でした。ところが常時接続の環境では、こうした情報を流すサイトの価値は大きく変わります。いつでも最新の情報が手軽に手に入るというのは、ありそうでありませんでした。もう、パソコンの電源が一日中切れなくることウケアイです。
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