今年のベストオンラインソフトには「Algodoo」を上げさせていただく。春に新着ソフトレビュー記事を執筆した時点で「これは有力候補だな」という感触がすでにあったのだが、こうして年末に振り返ってみても、やはり印象は揺るがなかった。ひとことでいうと「Algodoo」は「パソコン上で物体の運動を再現できるシミュレータ」だ。物体に力を加えると、どのような運動をするかをアニメーションで再現してくれるわけだが、力学の基本を学ぶための教材としてはもちろん、お絵かきツール感覚で描いたものを動かして遊んだり、簡単なゲームを作るためのプラットフォーム的な使い方もできたりなど、楽しみ方はユーザのセンスとスキル次第だ。
基本となる操作はドローソフトそのもので、矩形や楕円などのツールを使って画面上に図形を描くところからはじまる。ただ、し単なる図形だけではなく、歯車やロープ、チェーンといった動力を伝達するためのオブジェクトがあったり、図形を固定するためのツールを備えていたりするところが特徴だ。画面は立体空間を横から見た形の平面なので、3Dモデリングでパーツを配置するような手間がいらず、小さなお子さんでもすぐに扱える。
図形を描き終わったら、「Play」ボタンをクリックすると静止していた空間に力が加わり、物体が運動をはじめる。簡単にいうと、画面の上から下へ向かって「重力」が働くので、描いた物体は固定されていない限り、すべて「下」へ落ちる。
物体だけだと、物体は重力に引っ張られて無限に落ちるだけで、パソコンの画面上から消え去ってしまうのだが、そこに「地面」を描いておくと、落下した物体は地面にあたった時点で「跳ね返る」という運動をみせる。
また、図形上の一点を空間に「固定」すれば、そこが回転軸となり、固定されていない側が落下するので、結果、振り子運動が起こり、やがてそれが収束して「ぶら下がり」状態で静止する。
もちろん重力以外にもユーザが力の向きを指定したり、オブジェクトをドラッグして自由に動かしたりすることもできる。
さらに、物体の素材を変更することで摩擦や弾性の違いによる変化を調べたり、物体を「液状化」することで液体の運動を再現したり、実際に作るには大掛かりな装置を組み立てたり、重力加速度の値を変化させてみたりといった、シミュレータならではの機能も備えている。
一つひとつは当たり前でも、いろいろな動きが組み合わさったり、連鎖的に発生したりした動きがどのような結果につながるかをじっくり観察できるのはとてもおもしろい。ユーザが作成したさまざまなデータがレッスンとして公開されているので、それを動かしてみるだけでもかなり楽しめる。
海外製のソフトではあるが、アプリケーション本体だけでなく、チュートリアル部分までしっかり日本語化されているのも気軽に楽しめる理由のひとつだ。