2014年もさまざまなオンラインソフトを使ってきたが、久しぶりに登場したMac版はがき作成・印刷ソフトを“印象に残ったソフト”として紹介したい。年賀状は、日本ならではの年頭の習慣。メールやSNSの発達で出さない人も増えているとはいえ、ビジネスや親類づきあいには、いまも欠かせない、日本社会の大切な儀礼のひとつだ。そして、パソコン売り場に行ったことがある人はご存じだと思うが、12月から1月にはがきソフトと年賀状関連書籍がずらりと並ぶ風景は、年末の風物詩(?)となっている。
MacとWindowsの両刀使いの筆者だが、年賀状や挨拶状などのはがきはWindowsで作ることが多い。年賀状についていえば、このレビューの仕事で出合ったある市販ソフトを使いはじめてからは、その使い勝手に慣れてしまい、個人的にもずっとユーザだった。
はがきソフトというと、バージョンアップで機能が次々に追加され、まさにいたれりつくせりだ(Windowsの場合)。
- レイアウト(はがき作成)
- データベース(住所録)
- フォトレタッチ(デジカメ写真修正/加工)
- ドロー/ペイント系描画(イラストや地図、はんこづくり)
- ラベル作成/印刷(宛て名シール、メディアラベル、カレンダーなど)
をまとめて、なんでもありの“オールインワン”となった商品が多い。確かに写真の修正や加工、案内図の作成などの作業を一本のソフトで行えるのは便利で重宝するが、常に必要なわけではない。時には「さくっと起動して、簡単にすませたい」と思ったりすることも事実。そんなこんなで専用はがきソフトを使う機会も減っていた。
そんなときに出合ったのが「筆ぐるめ Classic for Mac」。長い間ほぼ1社のみだったMac向けはがきソフトの世界に久々に登場した新顔だ。「筆ぐるめ」といえば、Windowsのはがきソフトの“定番”のひとつ。その中でも、初心者向けを意識した操作性には定評がある(実際に、代表的なメーカー製パソコンにバンドルされるケースが多いようだ)。
Windows版はがきソフトとしては、他社製に比べても負けないほどの多機能なのだが、Mac版では「たのしく・かんたん・きれい」というコンセプトはそのままに、基本的なものに絞り込まれている。さらにサンプルデータもシェイプアップされており、軽いソフトに仕上がっている。ソフト名に「Classic」が付いているのが、まさにそのシンプルさの現れ。原点(基本)に立ち戻ったという意味合いだろう。
このソフトで気に入った点はいくつかあるが、まず、操作ボタンが横一列に並んでいて、作業の流れがパッとわかりやすい。例えば、おもて面であれば、住所録選択から宛名書き……、最後の印刷までボタンを追って進めればよい。もちろん、途中で元に戻って作業をやり直したり、ボタンを飛ばして先に進んだりもできる。最近は、多くのはがきソフトで初心者向けのウィザードが用意されているが、個人的にはこの方がフレキシブルで、親しみやすさを感じる。
年賀状のサンプルが「定番」「目上」「ともだち」「シンプル」「写真フレーム」と分類されていることもポイントだ。「目上」は文章が硬めで、格式に配慮したデザイン。正規の年賀状では失礼にあたる表現は除外されているので、ビジネス用途やあまり親しくない親戚宛てにも使える。「ともだち」は、カラフルでイマ風のデザインが揃い、こちらは友人や兄弟、親しい関係にある人など、プライベートなシーンで活用できそうだ。
意外に便利なのが「例文」。文章の書き出しに必要な季節の挨拶や決まり文句は、普段から慣れている人でもなければなかなか出てこないもの。特にビジネスでは、はがきに書く言葉の選び方一つでしくじりとなることもある。ほかに、冠婚葬祭の挨拶、おわび状などもあり、普段はあまり意識しない特別な文章を書く場面に遭遇したときには重宝するだろう。
デジカメ写真の補正も、切り抜き、明るさ/コントラスト調整、アンシャープマスクと、必要十分な機能を備えている。もっと品質や加工修正に凝りたい人はは専用のレタッチツールを使えばよい。
はがき用の文字フォントが付属するのもありがたい。
- 楷書系:有澤太楷書、有澤楷書
- 行書系:有澤行書、祥南行書体、正調祥南行書体、魚石行書
の筆文字6書体に加え、ペン字や隷書体、ゴシック体とバリエーションに富んでいる。フォントはほかのアプリケーション──例えばワープロなど──でも利用できるので、利用価値は高い。宛て名の住所と氏名は、文字数に合わせて全自動ではがき上に配置される。何も考えなくてもバランスよく揃っているのはありがたいが、できれば、レイアウト位置の調整くらいはできるとよいと思った。
このソフトの登場により、今後ははがき作成をMac上に移そうかとも考えている。住所録データをMac/iPhoneで共有しているので、流用しやすいためだが、さてどうしよう?