2014年のベストソフトには、Windows PEを起動可能なブータブルメディアの作成ユーティリティ「AOMEI PE Builder」を選定した。Windows PEは、一般的に使われるWindowsとは異なり、DVD/CD、USBメモリといったリムーバブルメディアから直接起動することが可能なサブセット版Windowsのこと。あらかじめハードディスクにインストールしておかなくても使えるので、例えばハードディスクが故障したときやディスクの交換時、バックアップでハードディスクからパソコンを起動したくない場合など用の特殊なOSだ。Windows PEは単体で販売されているわけではなく、方法さえ知っていれば、普段使っているWindows上から作成することができる。ただし、その手順は複雑だ。
「AOMEI PE Builder」では、Windows PEが起動可能なメディアをウィザード形式で作成できる。いくつかの簡単な質問に答えるだけで、すぐにWindows PEのシステムが含まれた起動メディアが完成する。従来は知識が必要だったWindows PEのディスク作成が誰にでも行えるようになる。しかもこのメディアには、Windows標準のツール以外に、AOMEI社のパーティション操作ソフト「AOMEI Partition Assistant Standard Edition」や、バックアップソフト「AOMEI Backupper Standard」などのアプリケーションが標準で組み込まれるという便利さだ。
ユーザインタフェースは残念ながら英語で、日本語で操作することはできない。ただし、設定内容は簡単なので、普通に使用するだけなら、英語が読めなくてもほとんど問題なく使えるだろうし、作成されるWindows PEのメディアは──日本語版Windows上で「AOMEI PE Builder」を使えば──もちろん日本語に対応する。ウィザードでの設定項目といえば、ユーザ独自のツールをメディア内に組み込むかどうかの選択と、作成するメディアの種類の選択くらいしかない。
標準で組み込まれるツールはそのほかにも、Windowsエクスプローラ、Windowsのリカバリに使用する「Windows Recovery Environment」など。Windows PEはWindowsのサブセット版で、フル機能のWindowsではない。すべてのアプリケーションが動作するわけではないが、エディタなどのツール類では正常に動作するものも少なくない。RAIDカードなどの専用ドライバが必要な場合でも、起動ディスクにあらかじめドライバを組み込むことができるので、特殊なハードウェアもWindows PEから操作できる。
メディアの作成では、CD/DVDメディアに対して「AOMEI PE Builder」から直接ライティングができる。USBブートできるパソコンの場合には、起動用のUSBメモリも作成できる。さらに、64bit版Windows上で作成すれば、できあがるWindows PEのシステムも64bit Windowsに対応したものとなる。
何らかの障害によりWindowsが起動しなくなった場合や、パソコンのBIOSアップデートなど、Windows上から実行できないような操作は、以前であればMS-DOSを使ったり、Windowsのセットアップディスクなどを使ったりといった操作が必要だった。しかし、それらには必要なツールが組み込まれていなかったりなど、制約も多い。誰でも簡単にパソコンを起動でき、必要なツールも搭載され、しかも「Windowsが動く」メディアを搭載できるツールの存在は極めて大きい。転ばぬ先の杖として、ぜひとも常備しておきたい。