2009年の「今年、最も印象に残ったオンラインソフト」に選ばせていただいたのは「今昔マップ2」。常に最新の情報を求められる普通の地図とは違い、ある土地が時代とともにどう変化してきたかを時の流れに沿って感じることができるという、ちょっと変わった地図ソフトウェアだ。基本的な操作はドラッグで表示エリアを移動し、スライダーやマウスホイールを使って表示倍率(縮尺)を変更するという、いたってオーソドックスなものだが、「今昔マップ2」にはそのほかに時間軸を選択する機能があり、地図に表示しているエリアはそのままに、異なる時代の地図が表示されるという、タイムトラベル的な感覚を味わえるようになっている。
今昔マップの地形図は地図を制作した年代に応じていくつかに区切られていて、例えば首都圏のデータでは、1896〜1909年、1917〜24年、1927〜39年、1944〜54年、1965〜68年、1975〜78年、1983〜87年、1992〜95年、1998〜2005年の各年代がある。つまり日本の近代化が本格的に進み始めた明治半ばあたりから現代までの地図を、時系列に沿って見ることができるわけだ。首都圏以外にも中京圏と京阪神圏のデータがあり、こちらでは大正時代後半あたりからのデータを見ることができる。
今昔マップのデータ以外にも、国土地理院のカラー地形図「ウォッちず」、1970年代以降の空中写真によるよりリアルな地図を表示できる「国土情報/オルソ化空中写真」、明治初期に作られた関東地方の迅速地図を表示可能な「歴史的農業環境問題システム」といった多彩な地図を表示できるのも大きな魅力だ。現在の地形図と空中写真や古地図をそれぞれ入手する手間や苦労を考えると、これらをパソコン上で手軽に見比べられるのはうれしい限りだ。
地図のデータファイルをあらかじめダウンロードしなければならないのが手間といえば手間だが、操作はボタンのクリックひとつで済むし、必要な時代の地図だけダウンロードすればいいので、ムダにハードディスク容量を食わずにすむと考えれば、むしろ好都合といえる。
検索機能を使って地名を探したり、目印を登録しておいてその場所へジャンプしたりすることもできるので、そこから気ままな空想の旅に出るのもよいし、HTML形式やKML形式(Google Earthで利用できる)に出力して、オリジナルのコンテンツを作ったりしていもよい。楽しみ方は多彩だ。
そういえば2009年は「歴女」といった言葉が話題になった年でもあったが、近代文学や政治、建築、都市計画などまで含め、広い意味での「歴史」に関心のある人にとっては堪らない一本だろう。