2012年に最も印象に残ったソフトとして筆者が推すのは「JpgMap」。単に写真を見るだけならスマートフォンでも十分という状況の中で、パソコンならではの新たな写真の楽しみ方と活用法を見せてくれたことを評価したい。「デジカメ写真に記録されているGPS情報(ジオタグ)をもとに、写真と撮影場所の地図(Googleマップ)を同時に表示できるようにしたビューア」というと、GPS機能を持たないカメラのユーザにとっては無縁のソフトと思われるかもしれないが、実はそうでもない。
地図上で指定した位置の座標をジオタグとして書き込めるため、GPSのないデジカメどころか、フィルムからスキャンした写真やイラスト、スクリーンショットなどでさえ、ジオタグの利用が可能となるからだ。
ジオタグによる最もわかりやすいメリットはもちろん撮影場所の表示だ。ウィンドウにはファイル一覧とビューア、そして地図がレイアウトされていて、画像ファイルを選ぶと画像が表示されると同時に、マップ上に撮影地を示すマーカーが表示される。
地図の表示や操作はGoogleマップに則しているが、そのほかにも選択中のマーカーが地図の中央へ来るように移動させたり、すべてのマーカーが表示されるようにスケールを調整したりといった機能もある。つまり、ファイルを選んで地図を表示するだけではなく、マップから画像を探すという使い方もできるわけだ。
これをさらに便利にしているのが写真の検索機能で、緯度と経度の指定や撮影した住所をもとに、マッチした画像だけを抽出して、ファイル一覧にフォルダツリーの形で登録してくれる。これにより旅先で撮った写真なども、あらかじめアルバム(カタログ)化しておかなくても簡単に探し出すことができる。
加えて「JpgMap」では、ジオタグの編集も可能。撮影地の座標を微調整したり、座標だけではわからない方角(撮影方向)を指定したりできる。
これらは、すでに述べたようにジオタグが記録されていない画像にも設定できる。例えば、GPS搭載スマートフォンで撮影した画像をもとに、ジオタグのない画像にまとめて座標を設定することも可能で、もし手持ちのデジカメにGPS機能がなくても大丈夫だ。
もちろん、ジオタグ以外に撮影日時も表示されるし、プロパティダイアログを開けば、簡単ではあるが絞りやシャッター速度などのExif情報も表示されるので、旅の記録として振り返るのはもちろん、次の訪問計画を練るのにも役立つ(余談だが、グラフィックエディタを外部アプリケーションに登録しておくと、Exif情報を残したまま、加工から保存までを行うことが可能だ)。
ジオタグは写真の管理においてもメリットとなる。「写真の分類整理」というコマンドでは、撮影地点の地名や住所をもとに都道府県や市町村といった単位でフォルダを作ってファイルを振り分けてくれるので、地域別の整理が大幅に省力化される(撮影場所以外に、撮影年月日によるフォルダ振り分けもサポート)。
そのほかにも、写真と地図や日付、タイトル、コメントなどを組み合わせて印刷したり、サムネイル一覧や撮影データと写真および地図とを組み合わせて印刷したりすることが可能。単なるビューアの域を超えて、ジオタグをベースに写真を管理するためのソフトといった仕上がりだ。
写真趣味のためのソフトとしてだけでなく、史跡や自然景観、歴史的建造物、習俗・文化、動植物の分布、地質調査、災害や事件の調査など、土地と座標に関するさまざまな分野で記録と整理に活躍してくれることだろう。