筆者が選ぶ2012年のベストソフトは、高性能な動画関連ソフトを多数リリースしている「TMPGEnc」シリーズにあって、DVDやBlu-ray Discのオーサリングに対応する「TMPGEnc Authoring Works 5」だ。「TMPGEnc」ファミリには、今回取り上げる「TMPGEnc Authoring Works 5」のほかにも、「TMPGEnc MovieStyle」「TMPGEnc Video Mastering Works」「TMPGEnc Smart Renderer」「TMPGEnc KARMA」といった、さまざまな名前のソフトがある。もちろんそれぞれできることは異なり、個々の分野ではいずれ劣らぬ高機能ソフトだが、正直、このシリーズに精通していないと、「どのソフトが何をするためのものなのか」がちょっとわかりづらい。
そうした中にあって「TMPGEnc Authoring Works 5」は、ソフト名そのままの「オーサリング」用ソフトだ。ある意味、とてもわかりやすいが、同時にこの「Authoring Works」は、「TMPGEnc」シリーズの集大成といってもよい存在だ。
というのは、オーサリングという作業は、ソースとなる動画の「取り込み」、不要部分の削除や動画同士の連結といった「カット編集」、トランジションや字幕追加といった「エフェクト」、「メニュー」の作成、編集結果の「エンコード」、そして最終段階となるディスクメディアへの「書き出し」という、動画編集に使われるすべてのステップを網羅する。このため、シリーズ中のほかのソフトで利用できる機能の大半を「TMPGEnc Authoring Works 5」でも使えるようになっている。
例えば、動画編集後のエンコードには「スマートレンダリング」と呼ばれるエンコードを高速化する仕組みがあるが、この機能に特化した「TMPGEnc Smart Renderer」でなくても、このスマートレンダリング機能を利用できる。
ファイルの読み取り機能では、MPEG-2やWMVなどの通常のファイルの読み込みはもちろんとして、MKVファイルH.264ストリームを含むFLVファイル、MOVファイル、Googleが提唱するオープンな動画形式「WebM」ファイルの入力にもネイティブに対応するなど、エンコード専門のソフトも顔負けの多彩な動画入力に対応する。
MPEG2 TSの入力では、複数の解像度が混在するような場合や、複数のストリームが含まれる場合でも読み込むことが可能。Blu-ray/DVDなどのように多言語の字幕データが含まれるMPEGファイルの場合には「どの言語の字幕を使用するか」まで指定できる。オーサリングソフトには、あらかじめBlu-rayやDVDで再生可能な動画データを用意しておかなければ使用できないようなものもあるところを、驚くべき対応範囲の広さといえる。
編集機能でも、カット編集、字幕追加、トランジションエフェクトなど、本格的動画編集ソフトにもヒケをとらない多彩な機能を搭載。カット編集時は「TMPGEnc」シリーズでおなじみの、1フレーム単位で編集ポイントを指定可能な、高いレスポンスのユーザインタフェースで作業を行える。
こうした「『TMPGEnc』シリーズならではの特徴機能」を多数搭載している点が、筆者がこのソフトを「シリーズの集大成」と表現した理由だ。年末の総決算にちなんで、というわけでもないが、年の締めくくりとして紹介するだけの資格は十分にある。簡単な操作で高度なオーサリングが可能なので、年末年始の休みにでも、自作Blu-rayや自作DVDを楽しんでみてはいかがだろうか。