今回は有力な候補作品がいくつかあったためにかなり悩んだが、2007年のベストオンラインソフトには「Another Bound」を選ばせてもらうことにした。決め手となったのは、- とてもフリーソフトとは思えない完成度の高さ
- FPSを苦手としている人間やFPS初心者でも楽しめるよう、よく工夫されている
の二点だ。FPS(First Person Shooter)は、一人称視点でゲームが進み、あたかも自分自身がゲームの中に入ったような感覚でプレイを楽しめるリアルさが売りだが、その一方でプレイヤーによっては「3D酔い」に苦しめられることもある。実のところ、筆者もこの「3D酔い」に苦しめられるうちの一人で、かなり初期のころからこのジャンルのソフトに触れてはいたのだが、ゲームの途中で必ず気持ちが悪くなってギブアップしてしまうという苦い経験しかない。
ところが「Another Bound」では、何時間プレイしてもまったく「3D酔い」は感じなかった。理由は定かではないが、「3D酔いし難いよう設計されたシステム」という作者の言葉と決して無関係ではないだろう。操作は、キーボードを使って移動とジャンプを行い、マウスを使って照準の操作と身体の向きの変更を行うという、最近のFPSとしては標準的な方式だが、マウスだけでなくペンタブレットにも対応しており、ペンを使ってより軽快に操作することも可能だ。攻撃はマウスの左右クリックどちらでも行え(ペンタブレット使用時はペンのタッチによる)、照準に向かって主人公の構えている銃器から弾丸が発射される。自動ロックオン機能により、敵のそばに照準が近づくと角度を補正してくれた上でサイトが拡大し、ロックオンしたことを知らせてくれるのもFPS初心者にとってはありがたい。もちろん、ベテランユーザ向けにロックオンを解除して攻撃する方法も用意されている。
ゲームの主人公は、かつて「セバス共和国」陸軍に所属する軍人だったが、わけあって退役し、現在はフリーエージェントとして活動している、コードネーム「ロスト」を名乗る人物(性別はゲーム開始時に選択する)。物語は、爆発事故を起こした宇宙ステーションに彼(または彼女)が到着したところからはじまる。任務の内容は、事故の調査と先行部隊の救援。問題の宇宙ステーションはとっくに廃棄されて無人であるにも関わらず、原因不明の事故を起こした。
調査のために軍から特殊部隊「ブラボーチーム」が派遣されたが、これも作戦開始後、まもなく音信が途絶してしまう。そこで、元陸軍大佐であった人物から隠密で依頼があったというわけだ。果たして、ステーション内は謎の凶暴な生物の群れが跋扈する地獄と化していた。しかも、そこには本来いるはずのない少女が一人取り残されていた……。軍まで敵に回ったなか、孤立無援の主人公と「セリア・キャロル」と名乗る少女、そしてブラボーチーム唯一の生き残りである「ジェイド・ハルバー」の三人は無事地球まで生還できるのだろうか――といったストーリーだ。
ゲームの難易度を「EASY」「NORMAL」の2段階選択できるのも、FPSに慣れていない筆者にとってはありがたかった。とはいえ、「EASY」でもかなりの歯応えだ。敵性生物やボスキャラとの戦闘はもちろん、パズル的な要素やジャンプステージのような要素も用意されており、生半可なことでは1ステージすらクリアできないだろう。作者のコメントによれば、「EASY」「NORMAL」のそれぞれに異なるクリア特典も用意されているとこと。特典を励みに、気合いを入れてチャレンジしてもらいたい、絶対にお勧めのゲームだ!