エドがネットダイブをしてから数分後に結果が出た。
その間にフェイがトイレから出てきて、モニターをじっと見つめ、スパイクもようやくソファーから起き上がり、アインは大きなあくびをしてから眠りについている。
「なっ・・・何てこった・・・」
最初に口を開いたのはジェットだった。
エドが引き出した賞金首のＩＤデータによると、レオナルド・バーンシュタインは、火星の大財閥の跡取り息子で、マリアンナ・コルデは、伝説の料理研究家で、俳優でもあるプラム・コルデの一人娘であることが判明した。
ジェットが驚いたのは、マリアンナ・コルデの父親のことだった。
プラムは、かつて凄腕刑事役で人気を不動にしたベテラン俳優で、ジェットは彼を目標として警官になったようなものだった。
だが、警官をやめた今でも、プラムが出演している料理番組やドラマなどを熱心に見たりすることもある。
元モデルの美人妻がいて、息子と娘もいて、大きな豪邸や別荘も車も数台持っていて、とても幸せそうに見えたはずが・・・。
その娘が賞金首になったのは何故か？
（まさか・・・・）
ジェットの頭の中に何かをよぎる。
例えば・・・。
殺人、高速バスジャック、放火、リンチ、強盗、そして・・・・・・。
「ジェット」
スパイクの声でハッと我に返る。
「この２人に心当たりでもあるのか？」
ジェットはすぐに頭をブルブルと振った。
「いくら頭で拒否しても、気になるんだ、特に女の子に」
フェイのツッコミにジェットはすぐにカッとなって、
「メイファといったのかしら？知り合いの娘さんで風水師の」
「彼女と一緒にするな！」
「あ？メイファを彼女だって、やっぱり気になるんだ。こういった若い娘に」
スパイクも思わずからかうと、ジェットは怒りだして、
「スパイク、お前まで」
「もしかしてこのふたり、かけおちしちゃったりして？」
エドがボソッと言うと、３人はハッとなって、
「おい、エド」
スパイクが目を丸くしながら言い返し、
「いくらなんでも駆け落ちとは・・・」
フェイもツッコミをして、
「その可能性は否定できんな」
ジェットが腕を組みながらつぶやくと、
「どうするんだ、スパイク、フェイ？」
「俺は降りるぜ」
スパイクが席を立とうとする。
「アタシは興味ないわ」
フェイも席を立とうとした時、
「いいのか？レオナルドにかけられた3000万とマリアンナにかけられた3500万」
ジェットの一言を聞いたフェイはふと足を止めて、
「3000万と3500万だって？やるやるやる！」
ビバップ号のパソコンから電話が鳴った。スパイクがとっさにリターンキーを押すと、画面に大きな猫が映っていた。
「そこのクズでズーズーしくてうそつきで、どうしようもない賞金稼ぎのスパイク・スピーゲル」
画面の向こうで猫を抱いた中年女が言った。
「あんたか？」
「久しぶりの挨拶にいったのに、あんたってのはないだろう？」
かつて、爆弾魔のデッカーを追跡する手伝いをした女トラッカーのＶ・Ｔことヴィクトリア・テレプシコレーと飼い猫のゼロスである。
「で、用件は？」
「話せば長いので、とにかくきてほしいんだ？」
「場所は？」
「火星のチャイナタウンの外れのボロいウィークリーマンション」
「エド、場所はわかってるのか？」
スパイクの呼び出しにエドはすぐさまＶ・Ｔが言ってた情報をネットダイブした。
「あっかいボロボロマンション」
それからスパイクはマシンを駆って、Ｖ・Ｔが指定した場所に向かった。
エドが言っていた通り、マンションは赤い建物でかなり古かった。
スパイクが部屋を訪ねると、ゼロスが向かってくる。
「・・・・・・」
しばらくたってから、じと〜っと冷や汗が出てきた。頭にゼロスが乗っているのをを我慢しながら、Ｖ・Ｔの話を聞いた。
作/平安調美人