「かずあみ」は、計算の過程と結果をすべて表示する履歴機能付きの電卓ソフト。使用できる演算子は加減乗除（＋/−/×/÷）の4種。演算子間に優先順位はなく、数値が入力された順に計算が行われる（いわゆる一般的な電卓と同様の方式）。BCD演算を採用し、計算誤差が極めて小さいのも特徴。

計算精度は非常に高い。計算値として使用できる数値は有効桁数33桁。内部計算では有効桁数66桁で計算されるため、原理的に精度劣化がない。さらに、数値表現にはBCD（2進化10進）方式が採用され、2進計算による誤差が生じない。利用可能な桁数と相まって、最後の1桁まで誤差の許されない財務計算などに向く。

数値入力や演算子の入力は画面上のボタン/キーボードの双方から行うことが可能。百/千/万の桁を一発入力できる「早打ち入力」機能もあり、桁数の多い計算もすばやく行える。

計算式の履歴機能を備えている点も大きな特徴。1行ごとに演算子と数値のペアを記録・表示する「プリンタ付き電卓」に近い方式をとる。プリンタ付き電卓と違うのは、履歴を過去に遡って編集できる点。過去の計算履歴を選択して数値を修正すると、計算結果の数字もリアルタイムで反映される。演算子を置き換えることも可能で、入力と同時に計算結果に反映される。

履歴画面では一般的なテキストエディタと同様、範囲選択やカット/コピー/ペーストを行うことが可能。外部の計算数値を貼り付けたり、計算式や計算結果を外部のアプリケーションに転送したりできる。テキストのドラッグ＆ドロップにも対応しており、手軽に他のアプリケーションとデータを受け渡すことが可能だ。

計算の経過と結果をファイルに保存する機能もある。保存形式は「かずあみドキュメント（.EDC）」またはテキストファイルから選択できる。EDC形式は「かずあみ」に関連付けられており、EDCファイルをダブルクリックするだけで「かずあみ」が起動し、すぐに再計算を行える。計算経過や結果にメモを貼り付けることも可能。メモは、1行にひとつずつ付けられる。フォント、文字色、ベースとなる「付箋紙」の色などをカスタマイズすることもできる。計算経過をファイル保存した場合は、メモの内容も保存される。

では、「かずあみ」における「何か」とは？　いうまでもなく履歴機能は標準の電卓に対する差別化となる。しかし筆者としては、ここであえて「精度」に注目したい。「かずあみ」では、内部計算としてBCD演算を使用し、66桁の有効数字を持っているとはっきり謳っている。これは四則演算を対象とする場合には十分な計算精度であり、またBCD演算を使用することで2進数で演算することによる誤差を生じさせない。Windows標準の電卓の場合、内部的な有効桁数は32桁であり、また内部演算の方式に関しては明らかにされていない（おそらく2進演算をしているものと思われる）。

ここで大切なのは、単純な「桁数の多さ」ではない。もちろん桁数が十分にあることも必要だが、むしろ内部でどのように計算し、どこまで信頼を置けるかが明らかになっていることこそ、大切なのだ。内部演算を2進数で行うことで誤差が生じる可能性があることは、コンピュータについて学習したことのある人なら多くの人が知るところだ。このため、内部的に2進で計算しているのか10進で計算しているのかわからないことは、ユーザに対して大きな不安を与える。「かずあみ」の場合、これを明らかにしているというだけで、安心できると思うのだ。

開発中に苦労した点
エディタを使っているような感覚で履歴の編集をできるようにしましたが、その操作をいかに違和感なく行えるか、という点でいろいろと試行錯誤しました。また、ファイルからの計算式の読み込みや、他のエディタなどとのコピー/ペーストやドラッグ＆ドロップのような基本機能を豊富に盛り込んだため、一見して派手さがないわりには開発量が多くなったという隠れた苦労がありました。

ユーザにお勧めする使い方
見た通り、基本機能は計算した結果が履歴として残り、間違っていたら履歴を修正できるというごくシンプルな機能で、説明するまでもないと思います。他のエディタで計算式だけ書いて、テキストファイルとして読み込んだり、コピー/ペースト、ドラッグ＆ドロップで取り込んだり、他のアプリケーションに渡したりといったことができますので、使い慣れたエディタで計算式を入力したり、計算結果を別のソフトで活用したりということが、わりと柔軟にできるのではないかと思います。メモを付けて保存することもできますので、あとで計算結果を参照したい場合に便利かと思います。

今後のバージョンアップ予定
今後、大きなバージョンアップは予定していませんが、もし時間があったら16進演算の機能を盛り込みたいと思っています。