「Bagel（ベーグル）」は、複数のWebページをすばやく切り替えながら閲覧できるタブブラウザ。タブブラウザには、レンダリングエンジンにIEコンポーネントを使用するものが多いが、「Bagel」では、Firefoxなどと同じGeckoが採用されている。

インタフェースは、同じタブブラウザの「Donut」風。「Donut」ユーザであれば、違和感なく使いはじめられる。また、ツールバーの構成やアイコンデザインなどはIEに近く、IEからの乗り換えユーザも戸惑うことはない。

特徴のひとつが、強力な検索機能。ツールバーのひとつ「検索バー」には、あらかじめ主要検索サイトが登録済み。ユーザが検索語を入力するだけで、自動的に検索サイトが呼び出され、結果がタブ表示される。プルダウンメニューから検索サイトを選べば、単語を入力し直さなくても、別の検索サイトで検索を実行できる。検索語のハイライト表示機能もあり、結果も見やすい。C/Migemo（ローマ字のまま日本語をインクリメンタル検索）を利用したページ内検索や、Grepにも対応する。

操作面では、マウスジェスチャ機能に対応する。さらに、左右ボタンのみならず、ホイールボタンやサイドボタンなど、マウスのオプションボタン類をカスタマイズすることも可能。もちろん、キーカスタマイズ機能も搭載する。

ブラウズ機能では、特定の条件にマッチするURI（URL）が呼び出された際、ブラウザの機能設定を変更する「URIアクション」機能が用意されている。例えば、セキュリティ面で問題がありそうなURIを表示する場合は、プラグインを呼び出さないようにしたり、スクリプトの機能を制限したり、といったことができる。「条件にマッチするURIを表示する際は、画像を表示しない」といったことも可能だ。

ポップアップブロック機能では、ホワイトリストを設定することが可能。リストされたURIのポップアップは許可される。ページ内広告も、URI文字列を指定することで任意の広告をブロックできる。

ブックマークの編集には専用画面を用いる。編集中、ブックマークを選択するだけで、実際に「Bagel」のメイン画面でブックマーク先を確認することが可能。MozillaのブックマークとIEのお気に入りをインポートする機能もある。

ブックマークの定義では、拡張設定としてURIブロックなどと同様に、表示するURIごとにセキュリティ設定を変更できる。例えば、スクリプトが含まれているページでも、それを実行しないで呼び出すようなブックマークが可能だ。

ところがIEには、IEのレンダリングエンジンだけを利用して、より機能強化した“IEベースのブラウザ”が数多く存在する。例えば、IEに欠けている機能で、最も大きいのがタブブラウザ機能だが、「Donut」「Sleipnir」のように、IEコンポーネントを使って機能拡張する優れたブラウザが存在することは、このレビューでも何度も紹介されている。

「レンダリングエンジンを他のプログラムから利用できる」というのは、何もIEに限ったことではない。Modzilla系のブラウザで使われる「Geckoエンジン」も、IEコンポーネントと同様、他のプログラムからも利用できる。しかし、実際にはGeckoエンジンを利用したブラウザはそれほど多くない。

これにはいろいろな理由があろう。プログラミングのための情報がIEのそれほど多くないのも理由のひとつだろうし、もともとFirefoxのようにIEよりも高機能なブラウザが存在するため、そうしたブラウザに対するニーズがなかったということも理由として挙げられるだろう。

ユーザインタフェース、特にアイコンデザインや画面デザイン、操作性といったものは、一度体に染みついてしまうとなかなか離れられるものではない。たとえ高機能であっても、おいそれと乗り換えられない理由がそこにある。

「Bagel」は、数少ないGeckoエンジンを利用したブラウザという点も注目だが、ユーザインタフェースがIE系のそれにかなり近いという点にも注目してほしい。乗り換えに必要な「慣れの壁」が非常に低いのである。それでいて、機能的にはIEよりもはるかに高い。これなら、新しいものに対する拒絶反応もかなり小さくなるのではないだろうか。

別にMozillaやXULがそれで評判を落とすのは自業自得なのでどうでもよかったのですが、Gecko自体がそのとばっちりを受けて評判が悪くなるのは我慢ならなかった。ならば、IEのUIをほぼ模しているDonut系タブブラウザを、さらに模したタブブラウザを、WindowsネイティブなUIで作ればよいという結論に至ったのが2003年夏。

Mozilla ActiveX Controlを使用したブラウザもあるにはあったのですが、どれもこれもIEベースタブブラウザがとりあえず売りにするためだけに実装したという感じ。これまたそのブラウザの評価がそれなりになるのは自業自得ですが、Geckoまでがとばっちりを受けるのは（以下同文）……ということで、ActiveX経由ではなく、直に実装しなければならない。

ちょうど2chでDelphi用GeckoSDKが公開されていたのを思い出し、2004年夏ごろ、それの最新版をダメ元で要望してみたら、思いがけなくその作者とコンタクトが取れ、ゲットすることができましたので、「OpenJane」等Delphiアプリを参考にしながら作りはじめたという次第です。

開発中に苦労した点
なんといっても資料が少ないことです。ちょっと背伸びをしようとするとMozillaのソースコード自体や英語の文献を漁らなければなりません。「Bagel」の目的には、Geckoを扱うための資料を作る実験台の意味合いもあります。また、間に文化祭と受験が挟まったのには閉口しました。なんたって組みはじめたのが高3の夏休みでしたから……。

ユーザにお勧めする使い方
画像をドラッグして保存するのは個人的にかなり気に入っています。また、Migemoを利用したインクリメンタル検索と、単語ごとに区切られた検索ボタンは私にとってなくてはならないものとなっています。ぜひお試しください。

今後のバージョンアップ予定
Ver.1.0まで出したら、「Bagel」の開発はメンテナンス程度にして、Gecko組み込みの資料作りや、Geckoを使った奇抜なソフト、それからFirefox等の拡張機能の開発に注力したいと思っています。