ソフトを開発しようと思った動機、背景
恋愛をテーマにしたゲームは星の数ほどありますが、やはり見ていて納得できるものになかなかお目にかかれないので、それなら自分で作ってみようということになりました。恋愛ゲームといえば、ある程度パターンができあがってしまっていると思います。出会いから日常の会話を重ねてご機嫌をとり、途中で3択(好感度を上下する)が出てきて、ある程度条件を満たしたら障害が発生、それを二人して乗り越えたらハッピーエンド。間違ったものを選べばバッドエンド──しかし、これだと、ヒロインと結ばれる方法は結局ひとつしかないわけです。それはつまり、「成功する」選択肢を「失敗する」選択肢で覆い隠しただけの一本道ストーリーであり、これをヒロインの人数分重ねてあるだけといえるかもしれません。この「アクアノートキャンパス」は、「好かれる選択肢」と「嫌われる選択肢」を並べたゲームではありません。ひたすらヒロインのご機嫌をとりつつ、ピンチのときにいい格好をして見せるゲームでもありません。プレイヤーが自分の前途に何を求めているかによって、二人のヒロインとの人間関係が変化するゲームです。二人の人間の人生がそこで交差するならそれでよし、平行線で別の道を行くとしても、それはそれで物語は完成するでしょう。それは「成功」と「失敗」ではなく、「そういう人生を選んだ」だけのことなのです。そういう意味では、このゲームは「恋愛が目的のゲーム」ではなく、「結末に恋愛が絡んでいるゲーム」なのかもしれません。ですから、「ヒロインと結ばれる選択肢を片っ端から探していく」ゲームだと思って遊んでいると、肩透かしを食らうかもしれませんね。
開発中に苦労した点
前述した通り、「ゲームオーバーによって足止めする」ための選択肢ではなく、すべて物語を分岐させてゆく選択肢で成り立っているゲームです。その結果が、合計23万文字を超える膨大な文章と、22種類のエンディングになりました。ですから、それらの膨大なルートを条件分岐によって完全に制御し、どんなルートを通っても物語として完成させることに、やはり相当苦労しました。
それだけの分量のあるシナリオですから、データ量もばかになりません。それに画像まで付けるとなると、普通の方法では巨大なファイルサイズになってしまい、気軽に遊んでもらうこともできなくなってしまいます。そこで今回は、Flashによるベクターグラフィック(線と塗りの情報で絵を描く)で人物画を描くことにより、劇的にデータ量を減らすことに成功しました。ベクターグラフィックの特性により、それほど緻密な絵を描くことは不可能なのですが、拡大/縮小/回転/着色/アニメーションをスムーズに行えるようになったのも大きな成果です。
そして最終的に、配布用ファイルのサイズをフロッピー1枚分(1.44MB)に収めるという目標を達成することができました。小さいファイルサイズの中に、限界まで物語のエッセンスを凝縮しています。
ユーザにお勧めする使い方
このゲームでは、ヒロインと結ばれるエンディングを見るのはたいして難しくありません。しかし、このゲームに複数の結末が準備されているのは、ヒロインの人格をさまざまな方向から見ることができるためでもあります。人間には誰しも欠点がありますから、理想的な環境で取り繕った美点だけ見て、互いのことをわかったつもりになることはできません。さまざまな状況に置かれてこそ、いままで見えなかった一面も見えてきます。人が人を知るには時間がかかりますし、長所も短所もすべてわかり合ってこそ、本当にお互いを受け入れることができるのですから。そういう意味でも、ぜひ複数のエンディングを見てほしいゲームです。
また、既読数がカウントされるシステムを採用していますので、可能であれば既読100%を目指してみてください。100%を達成した方には、ささやかな記念品も準備しています。
今後のバージョンアップ予定
細かいバグ取りなどはありますが、ゲーム内容がこれ以上変わることはありません。むしろ、前作である「時の故郷」との方向性の違いを楽しんでいただければと思います。唯一のハッピーエンドへの道を模索する「時の故郷」と、複数の視点から人物像を多角的に観察してゆく「アクアノートキャンパス」。理想のヒロインを描いた前作と、欠点をも兼ね備えたヒロインを描いた今作。共通したコメディタッチの物語の裏に、かなり違ったコンセプトが実現されています。ぜひとも両方プレイしてみて、アドベンチャーゲームやノベルの可能性について考えてみていただければ幸いです。
(MAKIO)