画面デザインやサウンドなど、細部に強いこだわりが感じられ、独特の世界観を形成している。例えば「アクションゲームでキャラクタを選ぶためのエントリー画面」のようなメカニックな印象。あるいは、人体の輪郭が何の飾りもなくポーンと表されている様子は、スポーツ医学分野などで見るような、コンピュータによる身体シミュレーション画面を連想させる。このような画面構成から、そして単調な動きとサウンドから立ち上ってくるなんとも不思議な感覚が「MiracleShaker!」の魅力だ。謳い文句の「新感覚スライダーアクションカウントゲーム」とは、なるほどうまく命名したものだとは思うが、確かにアクションゲームには違いないけれど、プレイヤーが行う「アクション」はきわめて限定されている。課せられた使命は、ただ、最終カウントを正確に合わせるために、振動スピードを間接的にコントロールするだけ。それも、ゲージをスライドさせるのみなのだ。
だから筆者も最初のうちは、自分でキータッチまたはマウスのクリックで振動させたい衝動にかられたり、もどかく感じたりしていたのだが、きつつきのように、あるいは電子ミシンの針のように規則的に律動するキャラクタを見ているうちに、研究室のブースで実験に参加したアスリートを注視するエンジニアのような、クールな感覚になってきた。こういう、ある種ストイックな姿勢が求められるゲームだけに、ハマる人には媚薬のように効いてきそうだ。
クリアのコツとしては、例えば、タイムゲージの半分(または1/4)を目安に、カウンタが指定値の半分になるように「安定」した速度を見つけることだろう。はじめのうちは、制限時間が30秒、1分では長すぎて“ダレる”かなと思ったのだが、意外にスリルがある。また、指定値は(100回〜1,000回などと)激変するため、毎回違ったゲームのように楽しめそうだ。
もう少し、短い時間でクリアするシーンがあれば、もっとスリルを味わえて楽しい……などと考えたのだが、またすぐ、いやこのままがいいと思い直すほど、ある意味で計算されつくし、完成されたゲームなのだ。
(坂下 凡平)