「満月の夜の姫」は、過去か未来かはっきりしないが、いまよりもずっと日本情緒あふれる生活をしている時代を舞台にしたドラマチックなRPGだ。お伽噺風の物語をコミックを読むような気持ちで気軽に楽しめる。ドラマが中心のゲームで、戦闘などは控え目のため、RPG初心者でも簡単にプレイできる。

化け猫のタマが入口の番をしている山奥の洞窟にいわくありげな若者、鞍春がやってきたところから物語ははじまる。彼は先月、妖怪にさらわれて行方不明になったという羽村の姫君を探しに（というのは口実で、その実、人の姿をした狐の姫に会うために）、妖怪が多数住まうこの洞窟へとやって来た……という筋立て。

このあと、鞍春を見張るためといいながら、なぜか一緒についてきたタマと洞窟内を歩き回り、タマのドジが原因のドタバタ珍道中を楽しみながら、途中で出会う妖怪たちと戦っていく（なぜかタマも協力して一緒に戦ってくれたりする）。

メッセージウィンドウに表示される二人のイラストも表情が豊かだ。見ているうちに、筆者が昔、愛読していたとある少女漫画家を思い起こしてついニンマリしてしまった。タマが妖怪の人質になったときには、戦闘画面にタマも登場し、主人公の特殊攻撃がタマに当たったりするのも楽しい。戦闘などの際にタマをないがしろにしないことがゲームクリアのコツである。

通常のゲームだとボスキャラにあたる妖怪たちの過去のエピソードもよく描けている。また、やはりなんといってもふんだんに用意された、オリジナルの一枚絵による演出が魅力だ。

RPGと思ってプレイすると少々物足りない面もあるかもしれないが、それを補ってあまりあるドラマが展開される良質のゲームといっていいだろう。ギャグありシリアスあり、意外性もありで飽きさせない。ぜひ最後までプレイして、ラストシーンまでたどり着いてほしい。

開発中に苦労した点
「RPGツクール2000」を購入してから初めて作った作品でしたので、基本的な操作を理解するところからはじまりました。表現力が乏しくて、頭に浮かんでいるイメージがなかなか形にならず、パソコンの前でずーっと腕組したまま画面を睨んでいるなんてこともシバシバ。

また、和モノということで、それに合ったBGM探しも時間がかかりました。『Nostalgia for the Wind』は、作曲者HAKさんが原曲を和風っぽくアレンジしてくださった曲です。

ユーザにお勧めする使い方
ひとつの回想シーンが終わったあと、なるべくデータを保存してから先に進んでください。「ツクール」シリーズをプレイしなれている方にとっては、難易度はとても低めになっていますが、それでもゲーム中、手に入る回復アイテムの数が決まっていますので、序盤はなるべく薬草を使いすぎないようにしてください。

今後のバージョンアップ予定
バージョンアップ予定は特にありませんが、いつか、番外編のようなものを作れたらいいなと思っていますので、そのときはぜひまた、鞍春たちにお付き合いくださるとうれしいです。