「SELECTION」は、もしかしたら将来起こり得るかもしれない世界を舞台にした、ちょっとユニークなRPG。主人公は現在14歳で中学2年生の少女、野々口勝美。彼女は、「野々口製薬」の社長令嬢として、弟の正太とともに、なに不自由のない幸せな生活を送っていた。ところがある日、彼女の父親のもとに1歳くらいの乳児が届けられたことから事態は一変する。赤ん坊と一緒に届けられた紙片には「あなたの娘、真由をお返しします」の一言。夫の浮気を疑い、正太を連れて家を出る母親。堅物社長のスキャンダルに沸き立つマスコミ報道陣。彼女自身も学校でイジメの対象となる。怒りに燃えた彼女は、父親の「身に覚えがない」という言葉を信じ、父親の潔白をはらすために行動する……という筋立て。

ゲームの基本的なルールは、謎を解明する手がかりを得るためにあちこちを探索し、途中で出会う敵と戦って経験値を獲得する、というもので、RPGとしては一般的なもの。武器として「学生カバン」「百科事典」「スタンガン」「スリングショット」などを使える。気力を消耗しながら「乱打」や「足払い」などの特殊技能を使用することも可能だ。もちろん勝美の体力が0になってしまうと、ゲームオーバーとなる。

勝美が行動するのは全部で5日間。行動の舞台となるのは、日中は地元の街と学校。放課後からは本格的な探索の時間となり、貧民街や野々口製薬の本社ビルなど、バラエティに富んだステージでの活躍が待っている。また、基本的には勝美の単独行動だが、時には国香と時子の二人の親友が同行してくれることもある。

第1日目の日中の学園ドラマ風の展開がよくできている。一番最初に戦う相手が同じ学生というところが楽しい。同級生たちのイジメと、それに対する勝美のリアクションも笑える。一歩間違えれば暗くて陰湿になりがちなストーリーが勝美のキャラクタによって、見事にコミカルなものへと変化しているのが気に入った。

こんな感じの展開でずっと続いていくのかなと思っていたのだが、その後のドラマの変転はなかなかのものだ。次から次へと新たな事実が発覚していき、プレイヤーを飽きさせない。また、それぞれのステージにメインのイベントとは別のサブイベントがいろいろと用意されていたり、ミニゲームが用意されていたりするのも楽しい。

冒頭の現代ドラマ風の展開のまま続くストーリーも見てみたかったので、その点は少し残念だが、それを割り引いたとしても、筆者がプレイしたことのあるRPGツクールで作成されたゲームの中では五指の中に入るよくできたゲームである。

開発中に苦労した点
個々のイベントシーンの演出でしょうか？　何度となく投げかけたり、妥協してしまったり……。それから、自分のものの考え方や信条を、押し付けがましくならないように表現するのは、想像していた以上に難しかったです。

ユーザにお勧めする使い方
勧善懲悪風の物語としてよりは、主人公から敵キャラ、NPCに至るまで、それぞれが主張や人生観を持ってるところに注目してもらえればいいな、と思ってます。

今後のバージョンアップ予定
バージョンアップは、バグの修正ファイルを常時、ホームページに用意してます。イベントの追加も、ご要望次第では検討したいと思ってます。