島川言成のベクター縦横無尽
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島川言成のベクター縦横無尽
 善意ある解析なら好意的な開発者も…… (02.09.02)

ソフトウェアに関して、これまでに登場した話題は、
  1. ソフトの適正価格
  2. 中毒性の高いゲームが含む要素
  3. 不要ソフトの削除方法と削除する理由
なのであった。今回は、ファイル管理ソフト「超使える便利なフォルダ」というソフトを開発、販売するたかはし@えかきさんから、新しいテーマが振られてきた。この話題に関しては確実に出てくるだろうナと感じていたが、それは何か? そう、ソフトの著作権問題だ。

たかはし@えかきさんは、ご自身のソフトを解析されてしまい、さらに本来ならば正規ユーザにのみ与えられるはずのキーを第三者に公開されてしまったとのことだ。ソフトのなかには逆アセンブラというものがある。機械語のプログラムをアセンブリ言語に変換するソフトで、アセンブラがアセンブリ言語で書かれたプログラムを機械語に変換することの逆の変換をする。

プログラムの処理手順を解析する目的は人によってさまざまだ。対象ソフトの改良を考えてという人もいれば、違法性の高い模倣を企てようとする人、ゲームなどでは裏テクを探索する人もいるはずだ。ただし、大半のソフトメーカーは、自社製品の逆アセンブル行為を禁止している。

「解析できる人はある意味、私は許しているというか、その方の技術や勉強に対して理解というか認めているところはあるのです。0と1のデータのアプリケーションをアセンブリに直して、しかもそれの処理を解読したり、またはバイナリダンプを読む作業をするわけです。とても大変で、私も開発で必要に迫られたとき以外は避けている作業です。それを好きでやっている解析者はある意味、貴重だと思うのですね」

気の短い人ならば、自身の知的所有物に対する違法行為に頭から湯気を出すはずだ。ところが、たかはし@えかきさんは、

「海外ではソフト開発者と解析者が意見交換して、よりよい暗号化やその技術をお互いに高め合っているそうです」

と冷静な大人(うし)なのであった。善意のハッカーには好意的な態度で対処するという次第だ。ならば、悪意あるクラッカーへの反応はどうか?

「解析初心者と呼ばれる方で、自分では解析できないけど、ただでソフトを使いたいとかで解析を人に頼む人がいます。あれは違うだろ! と考えています。自分で解析できないなら真っ当な方法でキーを取得してほしかった。また、公開するという行為で実際、どのようなことが起きるのかわかっていない人。そこまで考えていない人。その公表は著作権侵害になるので、確かにいい気分ではないです。しかしながら取り締まるものもまだ確立していないのが現状です」

昨今、知財特許に対する企業法務の姿勢が厳しくなっている。資本力のある企業ならば企業内外に腕の立つ弁護士を雇うこともできよう。が、個人が犯人を特定した上で民事訴訟を起こすことは、まず不可能だ。同様な怒りを感じている開発者の方々が何人もいるのではないか?

少しく重い話になったので話題を変えよう。ソフトの適正価格に関して、重田純矢さんから違う見解が出てきた。要するに「ソフトに対する価値観は人それぞれ違う」から、ぶっちゃけた話、本人が納得するならいくらでもかまわないではないかというものだ。次のようなことも書かれていた。

「例えば、Adobe PhotoshopだってElementsを除けば一般の人には高く感じられますが、プロの写真編集の人たちから見ればPhotoshopは安く感じると思います。パソコン教室の先生から聞いたのですが、プロ用ソフトは高いものになると何十万〜百万円ほどになると聞いたことがあります」

ぶっちゃけ話としては興味深い見識ではあるけれど、重田さん、これでは話が先細りになってしまうよぉと天を仰いだところに、OA機器の訪問販売をするガンチャンがタイムリーな話題を提供してくれた。ガンチャンは数万円から数百万円までのソフトを販売しているそうで、フランケンさんの言葉をパロってみて、次のような算式が成立するのではないかとのことだ。

「売り手側からみて、一般業務用のソフトを見る限り、(開発費+広告・営業などの諸経費+期待利益)÷期待販売数が原則。場合によってはそれを無視して戦略的な値段をつける場合あり。ただしサポートは基本的に別料金」

ガンチャンのような仕事の場合、保守サービスやら有償サポート料金を付加するケースも多いだろう。ただし“戦略的な値段”というところが気になる。これって、たまに新聞あたりで話題になるソフト入札価格1円みたいなものなのだろうか?

業務ソフトのなかには所轄官庁や影響力のある企業の制度変更などが原因で、ソフトの仕様を大幅に変える必要が生じるケースがある。現在、政府の方では配偶者控除の改変が議論されているが、これだけでも確定申告用ソフトのなかには仕様変更が求められるものが出てくるはずだ。ソフト販売戦略の具体的な事例も教えていただきたいと思うのであった。

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