島川言成のベクター縦横無尽
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島川言成のベクター縦横無尽
 ソフトの値段はいくらが適正か (02.08.05)

数多あるWebサイトのなかからベクターをチョイスする読者なんだから、ソフトウェアに関する何がしかの個人的見解を持っているに決まってるじゃん。それを受け入れるコーナーをはじめちゃおうと、このコラボコラムのコーナーをはじめた。で、1日に800万通は来るであろう投稿メールの交通整理の役回りをするため、オレは毎日更新を原則とココロに決めた。

「島川さん、そんなことをしたら寝る時間がなくなりますよ」。アキバで出会った知人にこの話をしたら、そう脅された。なんでも奴の作ったホームページにはアラシが現れ、とんでもない目に遭ったとか。も、もしかしたら、オレは想像以上の仕事を受けたのかもしれない……。論文にも匹敵するような分量のそいつがきたら、読みこなすだけでも大変だ。嗚呼、なんてことをしてしまったのだ。

杞憂であった。見事に“読み”が外れた。自分がほしいと考えるソフト、作者に対する要望、メーカーへの希望などが滅茶苦茶やってくることはなく、人口過疎地帯のタバコ屋のおばちゃんのように、ノドカにお茶をすするうちに時間が過ぎるのであった。結果、毎週月曜更新ということになった。こんな閉塞した時代だぜ。民草のものどもよ、もっと、大声を出そうよ。いま一度、オレは煽るわけである。ってことは、どんどん投稿してこいよってことだナ、です、ハイ。ちなみにシャイな人のなかには、匿名を希望される者もいるだろう。その旨書いていただければ、可能な限りご希望に沿おうと考えているからご安心を。

まっ、そんな状態でも、次のようなメールがボードブリッジ(島川命名)さんから届いた。ソフトの価格について書かれていた。

「パソコン購入は使用目的があったからです。みんなが持っているからという理由で購入する人もいるでしょうが、それは例外でしょうね。それではソフトはどうでしょうか? やはり使用目的があるという点では変わりませんが、問題は価格です。ハードの価格差は知れているのに、ソフトの場合、役に立たないツールが何万円という値段で売られていたりします。島川さんは、この点をどのようにお考えですか?」

ソフトの価格問題は、このマーケットが創出されたときからの問題だ。アキバのパソコン黎明期、ハードからソフトまで、オレは販売してきた。'80年代の中ごろ、日本電気のPC-9800シリーズが圧倒的シェアを誇っていた時代、プリンタなどの周辺機器とビジネスソフトを成約すると、いくらの売上があったと思う? な、なんと、100万円だ! 当時は自動車を買うかパソコンを買うかと悩んでいた企業経営者までいた。問題はハードに対して、ソフトの価格が高いということだった。現在「オフィス」という名前で販売されているソフトを、当時は切り売りしていた。表計算、DB、日本語ワープロなどがそれぞれ独立したジャンルで、ソフトメーカー各社から提供されていた。

オレが鮮明に記憶しているのは、まだ罫線さえ引けないバージョンの「マルチプラン」(表計算ソフト)、ブランド力のあった「dBESE II」(RDB)、最高級日本語ワープロソフトの「松」を成約カウンターの上に積んだときの快感だ。値引価格でさえ、こう言ったものだ。「全部で36万8,900円になります」。

当時、ソフトの価格が高過ぎると話す人たちは、物質的価値から文句を言っていたと思う。なるほど、商品を分解してみれば、パッケージ、マニュアル、媒体、付属書類だけだ。そんなものが何十万円もするのは許せないという次第だ。

もちろん、知的価値をソフトに見い出していた人たちもいた。管理工学研究所の名前を世に広めた日本語ワープロソフト「松」に惚れ込んだ中小企業経営者は、それを推奨しただけのオレに感謝までしてくれた。「いやぁ、驚いたよ。あんな高性能なワープロソフトが安い値段で買える時代になったものだ」

さて、ソフトの価格を考えるとき、目安になるものはないのだろうか? オレにも「だから安い(高い)のだ!」と自信をもって言うことはできないが、データエントリー業者の価格からの判断というのはどうかナと考えている。データエントリーサービスの平均的な価格は1バイト1円程度だ。プログラム記述ではなく、単純に指定された書面をキーボードから打ち込むだけの価格がこの値段だ。

ベクターで人気の高い「秀丸エディタ for windows95/98/NT」は何バイトで構成されているか? 約1.23Mバイト(Ver.3.17)で、価格は4,000円だ。1バイト0.003円程度ということになる。荒っぽい試算であることは百も承知だが、データエントリーサービスの単純にキーボードを叩く人が、知的創造物を提供しようとする人の300倍以上の費用を発生させているわけだ。作者の斉藤さんと山田さん、極安ソフトを提供してくれてありがとうと握手したくなる。

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