ビバップ号殺人事件

 何の変哲もない、ありきたりの日だった。
いつもの場所でいつものようにのんびりと過ごしていた。

ジェットは洗濯物を干していた。スパイクは釣り糸をたれていた。
エドはまだリビングでモニタとにらめっこしていたし、アインは哀れに枕と化していた。
フェイはシャワーを浴び終え、今から日光浴でもしようかと準備をしようとしていた。

「きゃああああー!」
突然ものすごい悲鳴がビバップ号に響き渡った。
「フェイフェイー。ふぇいふぇいがぁ、スパイクー、ジェットー。フェイがぁ。」
急いで中に駆け込んできたジェットとスパイクを迎えたのはエドの涙声だった。
 部屋の中を覗き込んだ男二人が見たものは、胸から大量の血を流して、ベッドに仰向けに倒れ、息絶えている、フェイの姿だった。
「見るんじゃねぇ!」
厳しい声で、ジェットはエドをリビングに押し戻した。
スパイクはフェイに近づき、首に手を当てた。まだ暖かかったが、そこにあるはずの鼓動はなかった。
 そして、フェイの信じられないものを見たというその何も映さなくなってしまった目をそっと閉じた。
 それから、ジェットのいかにも的な現場検証が始まり、エドはアインを抱きしめ、リビングで泣きつづけていた。スパイクは何を考えているのか、自分の部屋に引きこもったまま出てこなかった。
 「フェイの悲鳴がしたとき、俺とスパイクは甲板にいた。エドはここでモニタに向かっていた。ま、アインはいいだろう。怪しむべき人間はここにはいない。しかし、フェイは何者かに殺された。あの女は間違っても自殺するようなタマじゃない。胸を刃物でざっくり切られている。しかし、凶器はない。」
ジェットは何で、ISSPをやめたんだとスパイクは考えていた。こんなに向いてるのに。

ビバップ号の中は暗く沈んでいた。
ジェットは何一つ明確にはしなかった。外部犯とも内部犯とも取れる事件なだけに慎重になっていた。
スパイクはいつもと変わらぬ態度を崩さなかった。
エドも幾分落ち着いたのか、アインを枕にぼんやりと寝転んだままだった。

降って沸いたこのフェイの殺人事件はこれからビバップ号におきる恐怖に満ちた事件の予兆でしかなかった。

つづく・・・。

作/猫宮よしき

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