筆者が選んだ今年のベストソフトは、ネットワーク経由でほかのWindowsパソコンを操作できるリモートコントロールソフト「Brynhildr」だ。「リモートコントロールソフト」とは、ネットワーク接続されたほかのパソコンの画面を現在使用中のパソコンの画面に表示し、手もとで操作したキー/マウス入力を接続先のパソコンに反映させることのできるソフトのこと。Windowsであれば、Professional以上のエディションに標準添付されている「リモートデスクトップ」や、各種OSで利用できるマルチプラットフォームの「VNC」などがよく知られている。
「Brynhildr」もこうしたリモートソフトの一種だが、ほかにも同種のソフトがたくさんあり、しかもそれらにも多大なメリットがあるなかで「Brynhildr」を選択する理由は、そのバランスのよさにある。
すぐに使える手軽さという意味では、Windowsの「リモートデスクトップ」が使えるので、純正ソフトには及ばない。「リモートデスクトップ」には、狭いネットワーク帯域でも非常に“軽く”使えるという大きなメリットもある。純正という安心感もある。ただし、遠隔操作という目的は果たせるものの、サーバ側の画面が表示されなくなってしまうという大きな欠点がある。
「VNC」は、多くのOSで使えるというメリットがあるほか、画質的にも優れるが、ネットワーク帯域への要求が厳しく、パフォーマンス的にも劣る。有志による日本語化も行われているが、きちんとリモートでかな漢字変換が行える環境まで持ってゆくには手間がかかるし、セットアップも難しい。
これらに対して「Brynhildr」は、もともと日本人の手によるソフトだけあり、日本語は日本語キーボード対応まで含めて完璧だし、サーバ側、クライアント側ともに同一オブジェクトで、かつサービスとしての登録も簡単であるなど、使いはじめるまでの手間もかからない。全画面を転送しているとは思えないほどのパフォーマンスの高さも大きな魅力だ。
マルチOS対応の「VNC」の魅力も、すでに「Brynhildr」ではiOS対応のクライアント「Orthros」が存在するし、そのほかのOS向けに対応できる可能性を拓く「パブリックモード」搭載の新バージョン「Brynhildr 1.0.1.0」も登場している。現時点ではまだプロトコルがオープンになっただけで、Android向けアプリが登場したわけではないが、それらへの道筋が見えてきたところといってよい。
リモートコントロールソフトは、使う人と使わない人がはっきりと分かれるが、それらを必要とする人にとって、ほかの多くのソフトと比較してもさまざまなメリットを持つ「Brynhildr」は、とりわけこれらからの展開を注目してほしいソフトだ。本当に手軽に使いはじめられるので、ぜひ、試してみることをお勧めしたい。