「やるぞ！確定申告2010」は、納税用の確定申告書を作成するための支援ソフト。申告書類の縮小イメージがそのまま操作画面になっており、書類上で入力したいブロックをクリックすれば、データを入力できる仕組み。作業内容を解説してくれる音声ガイド機能も備え、はじめて確定申告書類を作成する人でもスムーズに作業を進められる。

書類の作成は、（1）まず「基本情報設定」で申告者の氏名や住所などを登録し、（2）収支の内訳書や明細書などの添付書類を作成して、（3）最後に確定申告書に必要事項を入力する、という手順で行うが、ユーザの好みで、申告書の入力画面から内訳書や明細書の入力画面を開いて作業を進めてもよい。基本情報設定で入力した情報は、各書類へ自動的に転記される。

ガイド機能は、詳細で充実している。「どの書類を作成すればよいかわからない」という人には、職種や収入の種類などを選ぶだけで必要な書類を教えてくれる「提出書類ナビゲーション」が用意されているほか、作業手順や入力する内容を音声で解説してくれる「ビデオナビ」なども搭載する。さらに、詳しいテキストによる解説もあり、申告書に付随して提出しなければならない必要書類や控除の対象など、細かい規定を調べることもできる。

作成した書類は、印刷すればそのまま確定申告書として税務署へ提出することが可能。印刷オプションでは、白紙に申告書の様式で印刷するか、または税務署が配布している用紙に印刷するかを選択することもできる。住所や屋号など、あらかじめ用紙に印刷済みの基本情報を印刷対象外として指定することも可能だ。

申告用のデータは最大3件までを作成することが可能。夫婦それぞれで申告しなければならないような場合にも対応する。データは切り替えたり、バックアップしたりできるほか、「やるぞ！確定申告2009」や「やるぞ青色申告！（2008/2009/2010）」から取り込むことも可能。減価償却や収支内訳などの基本的なデータを引き継ぐことで、入力を簡略化できるようになっている。

もともとが、決まった様式の書類作成を支援するソフトなので、機能面での差別化は難しいところだが、そのなかで「やるぞ！確定申告2010」の特徴といえるのは、「各書類についての説明などがしっかりしている」ことだろう。例えば、医療控除の対象となるものや対象外となるものなど、はじめて申告する人にはわかりづらいポイントも、具体的な事例を挙げて説明してくれるのはありがたい。

一方で、ちょっともの足りなさを感じたのが「ビデオナビ」機能だ。その名前から動画を使った視覚的かつ具体的なガイドを期待してしまったのだが、実際には画面のスクリーンショット（つまり静止画）に音声ガイドを乗せたもののようだ。例えば「静止画をベースに、マウスポインタを組み合わせて操作個所を示す」といった追加機能でもあれば、さらにわかりやすくなるのではないかと思う。

というわけで、ちょっとした部分が気になってしまったが、もちろん基本的な機能やユーザインタフェースに問題があるわけではない。画面上の推奨作業手順に目を通しておけば、およその流れはつかめるし、申告書の作成をある程度経験した人なら、ウィザード的な手順に縛られずに、好きなところから自由に入力していける点にも親しみを感じられる。

「はじめての確定申告で、どこから手をつけてよいかわからない」という人から、より精細でしっかりした明細や仕訳をしたい人まで、幅広いユーザの助けとなってくれそうな一本だ。

開発中に苦労した点
「やるぞ！申告」シリーズは、おかげさまで長年継続してご利用いただいているユーザが多く、使い勝手がよいとご好評いただいているユーザインタフェースは極力変えずに維持した上で、最新版として改良するところに苦労しました。また、2010年版よりMac OS X版も開発したのですが、インタフェース等は同じでも、一部OSによる差異が出てきてしまうので、それを吸収するのにも苦労しました。

ユーザにお勧めする使い方
旧製品をお使いいただいている方には、“同じようなのに新しい”今回のバージョンをぜひお試しいただきたいです。よいところはそのままに、これまでわかりにくかったところやデータの扱いなどは、きっちり改善されています。新規の方、Macをお使いの方には、多くのみなさまに長年愛用されている「やるぞ！申告」シリーズに触れていただくチャンスではないかと思っております。青色申告、確定申告を始めてみるきっかけになれば幸いです。

今後のバージョンアップ予定
新年度対応データは、2月初旬に配布予定です。