多彩なメディアミックス展開を行っている「ひぐらしのなく頃に」の根幹ともいえるオリジナル同人ゲーム。四つのシナリオとふんだんに用意された「TIPS」をもとに、物語に秘められた謎をすべて解き明かしてゆく。「ひぐらしのなく頃に」は、架空の寒村「雛見沢村」を舞台にしたサウンドノベル形式の本格派推理ミステリー。アニメやコミック、小説などの作品がメディアミックス展開されているが、本作品は原作である同人ゲームのうち、「鬼隠し」「綿流し」「祟殺し」「暇潰し」の前半4編をまとめたダウンロード販売版となっている。登場人物たちが座談会形式で謎について語り合う「お疲れさま会」や「ミニゲーム」も同梱されている。
時は昭和58年6月。主人公の少年「前原圭一」は、つい最近「雛見沢村」に引っ越してきたばかり。受験ストレスから逃れるようにこの村にやって来たが、年齢も学年もバラバラな4人の少女たちとなかよくなり、次第に村での生活になじんでゆく。
村は一見穏やかだが、実は5年前までダム工事建設に反対し、政府を相手に過激な闘争を繰り広げていた過去を持つ。村民の異常なまでの団結力により、ダム建設を永久凍結にまで追い込んだ。雛見沢村はかつて「鬼ヶ淵村」と呼ばれており、村民たちは自らの体内に人食い鬼の血が半分流れていると信じて、「オヤシロ様」とその祟りを信じる独自の宗教観を持っている。実際、ダム闘争終結以来、4年間連続で「オヤシロ様の祟り」と信じられている怪死事件と「鬼隠し」と呼ばれる失踪事件が対になって、村の祭り「綿流し」の日に発生していた。
プレイヤーは、4編の物語を通して、このおどろおどろしい連続怪死・失踪事件の謎を解明してゆく
「鬼隠し」「綿流し」「祟殺し」の3編では、前原圭一の目から見た雛見沢村の日常と、「綿流し」の祭りの夜を境に姿を現す村の暗黒面、「オヤシロ様の祟り」の恐怖を体験できる。選択肢のない一本道のサウンドノベルで、ほとんど同じ設定でありながら、少しずつシチュエーションの異なる3種類のストーリーを読むことで、さまざまな角度から事件の全容を把握できるようになっている。
「ひぐらしのなく頃に」シリーズの中では、この3編が“出題編”という位置付け。出題編の情報をもとに物語全体の謎を解くことがゲームの醍醐味となっている。残る「暇潰し」編は、いわばオマケの番外編。公安部の新米刑事「赤坂衛」を主人公にした作品で、舞台は昭和53年初夏、ダム工事反対闘争まっただ中の雛見沢村だ。前3編とは異なる角度から雛見沢村が描かれ、一部推理の参考となる部分もある。
物語を彩るヒロインは多彩だ。「竜宮レナ」は、引っ越してきたばかりの主人公の面倒を何くれとなく見てくれる、料理上手で献身的な女の子。かわいいものを見るとすぐに“お持ち帰り”したくなる悪癖がある。みんなが悪ふざけをしすぎたときには、必殺の「れなぱん」で瞬殺する最強のキャラでもある。
「園崎魅音」は、最上級生のクラス委員長で、みんなのリーダー的な存在。雛見沢村を実質的に支配している「園崎家」の次期頭首で、地元で勢力を誇る暴力団「園崎組」組長の娘でもある。
「古手梨花」は、圭一の下級生。「雛見沢村御三家」のひとつ古手家最後のひとりで、古手神社の巫女を務める。幼いながらも神秘的なところがあり、村の老人たちから崇拝されている。
「北条沙都子」は、古手梨花と同級生の、負けず嫌いでイタズラ好きなトラップ名人。亡き両親が雛見沢ダム建設推進派だったため、“村八分”状態。同じく両親のいない梨花と助け合って暮らしている。
さらに、2編目の「綿流し」編からは魅音に瓜二つの双子の妹「園崎詩音」も登場する。
各シナリオは独立しているが、先立つシナリオをコンプリートしてからでないと、次のシナリオは選択できない。「鬼隠し」編から順番にプレイすることが求められる。各編とも複数のパートからなり、物語を区切りまで読み進めることで「TIPS」を手に入れることができる。内容は、各登場人物の名前や家族、家庭に関する情報、学校・村に関する情報、雛見沢で起きた事件に関する新聞や週刊誌の報道内容、警察の捜査状況や極秘資料など、さまざま。多くは文字情報だが、登場人物たちの日常の1シーンの形式で情報が語られることもある。
入手したTIPSはその場で見ることも、あとで見ることも可能。本編のドラマ内では語られなかったさまざまな情報を得ることができるので、事件の真相を解明する助けともなる。ただし、推理をミスリードするための作者のトラップとして働くものもあるかもしれないので、注意が必要だ。
各シナリオの読破後には、登場人物たちが集う「お疲れさま会」を見ることができるようになる。登場人物たちが役者としての立場で、謎について語り合うギャグ形式の短いシナリオだが、ゲームの楽しみ方なども語られるおり、“ひぐらし初心者”にとっては参考になるだろう。
「お疲れさま会」読破後には、ミニゲームがプレイできるようになるオマケも用意されている。ミニゲームは1編ごとに1ゲームで、「れなぱん」「SFB」「DDD」「お散歩」の4種類。いずれもレナや梨花などのヒロインを使ってマウスの左右クリックで操作する(一部キーボードも使用する場合もある)シンプルなアクションゲームだ。