「DigitalDarkroom」は、RAW形式データの現像やレタッチを高速処理できるソフト。独自技術「ArcSoft Advanced RAW Technology」を搭載し、RAW展開がきわめて速い点が特徴（編集対象となるRAWデータや画像解像度により異なるが、純正ソフトよりも数倍は高速にRAW現像が行えるようだ）。RAW編集ソフトでは不可避といえる、現像に要する時間が短縮される。画像のスクロール時には低解像度での表示が行われ、スクロールが停止した時点で高解像度表示になる「プログレッシブ」展開が行われるため、体感速度ではさらに速く感じる。

メイン画面には、編集中の画像のほか、展開可能なツールパレットや編集対象の画像サムネイルが並ぶ。多くのデジタルカメラメーカーが提供する「RAW現像ソフト」に近い画面構成で、そうしたソフトの使用経験があれば、操作に戸惑う心配はない。

レタッチ機能は豊富。ツールパレットには「露出補正」「ホワイトバランス」「赤目補正」「ほこり除去」「露出補正」など、11種類のパレットが用意されており、各パレットは自由に展開・折りたたみできる。写真の補正に使用したパレットや補正値は「レシピ」として保存しておける。RAWデータはもちろん、JPEG/TIFF画像の編集にも対応する。

画面は、編集画像選択用の「ブラウザモード」にも切り替えられる。ブラウザモードは、エクスプローラ風のツリービューとサムネイル表示からなる（いわゆる「画像ビューア」風の）デザインで、編集したいサムネイルを画面下部のサムネイルエリアにドラッグ＆ドロップすることで編集画像を登録できる。複数のフォルダにまたがるファイルを同時に編集対象にすることも可能だ。

画像の表示方法は3種類。現在のウィンドウサイズに自動フィットする「最適化表示」、元画像の1ピクセルを画面上の1ピクセルに割り当てる「等倍表示」、縦横を2倍に拡大する「4倍表示」を、ツールバーからワンタッチで切り替えられる。

表示機能でユニークなのが「ビフォーアフター表示」だ。編集前後の画像を左右に並べて、どのような編集が行われたかをわかりやすく表示してくれる。画面をスクロールさせた場合、比較しやすいように左右の画面が連動して動く。

さらに「ハイライト/シャドウ表示」機能では、画面内で白とびや黒つぶれが発生している部分に色をつけて表示させることが可能。また、たる型や糸巻き型のひずみ、パース調整などを行う場合には自動的にグリッドが表示され、調整具合がわかりやすい。

このためRAW形式をパソコンで扱おうと思うと、本来ならカメラ内部で行われる処理をパソコンで行う必要が出てくる。こう聞くと余計な手間がかかるだけのように感じられるが、より処理能力の高いパソコンで加工することで高い画質が得られたり、露出補正を行えたり、色温度の補正が行えたりなど、より撮影者の意図が反映された画像が得られる。

RAWファイルは、カメラの機種が違うと現像の方法も変わる。なぜなら、カメラに内蔵される撮像素子や周辺回路の構成は機種ごとに違うからだ。このためRAWデータの「現像ソフト」は、メーカーごとにそれぞれ異なるものとなり、メーカー間の互換性がない。それどころか、同一のメーカー内でも複数の現像ソフトがあり、それぞれ対応する機種が違うこともある。

「DigitalDarkroom」は、多くの機種をサポートすることでメーカー間の現像ソフトの非互換を解消する。この種のソフトは最近では数多いが、「DigitalDarkroom」の最大の特徴は、本文でも触れた通り“とにかく現像が速い”ことだ。実際に触れてみると、ほかのソフトとのあまりの違いに驚かされるほど。特に最近のデジタルカメラでは高解像度化にともない、RAWの現像時間は長くなる傾向にある。パソコンの処理能力も上がっているが、それ以上にデジタルカメラの高解像度化の方が速いのだから仕方ない。

そんななか、「DigitalDarkroom」の軽快な操作性・処理速度はすごい。パソコンの性能が二段も三段もパワーアップしたかのように感じられる──これだけでも使う価値がある、と思わせるソフトだ。