ソフトを開発しようと思った動機、背景
英語ベースでは「ポータブルFirefox」や「ポータブルThunderbird」というUSBメモリ単体で動作するものがありました。しかしそれは、拡張を行うたびに何度も再起動をかけなければならず、自宅の環境と同じ状態を作り上げるのには時間と労力が必要でした。これは日本人の感覚に合わないと思いました。また、Mozilla Japanが設立直後で、本家とは別に「日本語版ポータブルFirefox」を配布することはMozilla Japanが認可しないと考え、Mozilla Japanの配布パッケージを利用してツールで作成する方法を選びました。USBメモリを利用するケースは大変増えており、「Firefox」や「Thunderbird」を普及させるには絶対必要だと考え、超手抜きなプログラムでしたが初心者でも操作できることを第一条件にしました。思いついたのが2004年の11月7日で、「Firefox」を利用しようとする人たちに認知させるには同時にリリースした方がよいと考え、最初のバージョンは2日で完成させ、「Firefox 1.0」のリリースと同時に発表しました。某ソフトウェアニュースでは週間記事ランク2位、月刊記事ランク7位、年間記事ランク99位となり、上々のスタートができました。開発中に苦労した点
あまりありません。今回の開発言語はフランス製の「PureBasic」を使用しており、英語の資料を読んだり、英語のフォーラムに参加したり、そういったことは超お手軽ネットラジオソフト「おりゃ」で何ヵ月にもわたって経験済みだったからです。ただGeckoベースのブラウザを触るのは今回が初めてで、機能拡張するたびにXULというわけのわからない開発環境の存在に苦しみました。何より一番苦労していると思うことは、どのように使われているのか知ることが大変でした。最初の要望メールはIMAP環境でフォルダが30以上ある状況下でのトラブルでした。IMAPって何? 検索エンジンで調べてもIMAPの正体がわからず困りました。IMAPはUSBメモリ上にメール内容のデータベースを置くのではなく、ネットのメールサーバ上に置くもので、万が一USBメモリが盗まれたり紛失しても個人情報の漏洩はありません。現在、「携帯FOX」は仕事で使うケースが大変多いとわかってきており、USBメモリのメール内容が外部に漏れることを恐れる人からメールで改善の要望をいただいています。現状はIMAPへの移行を勧めております。
ユーザにお勧めする使い方
基本は自宅のパソコンで使って、外出したときだけ「携帯FOX」を利用するスタイルをお勧めします。この使い方が慣れない方はMozilla Japanとの共同プロモーションの製品であるハギワラのUSBメモリをお勧めします。ただし、バージョンアップは「携帯FOX」同様に、パソコンにFirefoxやThunderbirdがインストールされている必要があり、やや難しい操作が必要となります(※編集部注:この部分、初出から一部修正を加えました)。あとUSBメモリの推奨についてですが、最もよい選択はアイ・オー・データ機器製のTrueFFS技術搭載モデルです。いろいろなメーカーのUSBメモリを試していると、USB 2.0対応の最新型よりもUSB 1.1のTrueFFS技術搭載モデルの方が速いという結果が出ています。これについてはなぜだかいつもアイ・オー・データ製が1位になる「携帯FOXベンチマーク」をお試しください。
今後のバージョンアップ予定
4月に開催されたもじら組によるMozilla Party 6.0 JPの集まりの中で、USBメモリ専用のFirefoxとThunderbirdのプロジェクトがスタートしたと聞きました。将来はMozilla Japanから専用ソフトが出るだろうと思いますが、私の予想では棲み分けはできると考えています。
Mozilla Japanが企業へのプロモーションを強化していくだろうと思いますので、今後は企業で利用されるケースを想定したソフトウェア設計とサポートを行っていきたいと考えています。起動と終了に時間はかかると思いますが、256ビットAES暗号システムによるメールの内容保護、もしくはハードレベルでのセキュリティロックをかける方法を動画チュートリアルで配信することを考えています。また、「ポータブルFirefox」のような使い方ができるようにしてほしいという要望が高いため、補助的なツールではなく、主力的なツールとして機能の強化を図りたいと考えています。あとできるかどうか難しいといわれているのですが、XULアプリケーションと「携帯FOX」を連携させて、Windows・Mac OS X・Linuxのブックマーク・アドレス帳の同期が簡単にできるものを検討している段階です。現段階ではマニアックな機能よりも、自宅PCとUSBメモリのメール内容・アドレス帳・ブックマークの完全同期対応を優先するべきだと考えてます。10日分に削減する機能をすべてのフォルダに対応させます。
セキュリティチェックの強化を図りたいと思います。ファーミング詐欺対応です。ネットカフェで利用するのは便利ですが、もしそこにファーミング詐欺の仕掛けが施されていた場合、簡単に騙されて個人情報が漏れてしまいます。それが仕掛けられているかどうかを調べるのは簡単なので、仕掛けられていた場合は警告を出すように改良します。
ファーミング詐欺とフィッシング詐欺の違いと対策について
Mozilla Party 6.0 JPの発表の場で片山昌樹氏(有限会社マギシステム主任研究員)から次のような説明がありました。
セキュアなWebブラウジング(有限会社マギシステム 片山氏)フィッシング詐欺について、人を騙して個人情報(名前、住所、クレジットカードの番号と有効期限、ネットバンクのIDとパスワード)を入力させ悪用する詐欺のひとつ。アメリカでは1年に1,000億円の被害が出ています。また世界の詐欺の流れが、フィッシング詐欺からファーミング詐欺(フリーソフトを配布し、パソコンの機能を悪用してブラウザの安全機能を麻痺させ、信用あるサイトの詐欺サイトへ誘導し、個人情報を入力させるもの。いくら注意しても判別不可)に移行しつつある。当社の予測では今年の後半から被害が拡大するのではと見ています。- ソーシャル的な内容メール
- 本物そっくりなページ構成
- IDN (国際化ドメインネーム、アドレスの所に表示される英語以外の文字で、見た目は区別できない。例えば、Paypalの場合、aにIDNの文字が使われる例がすでにある。一時、ニュースでブラウザが悪いように報道されたが、そもそもブラウザの問題ではなく、ドメイン管理の問題である
- SSL(暗号化システム)がかかっているように見える
- 実はそれほど新しい詐欺ではない
- メールに記されたアドレスが実サイトと表示サイトが不一致である
海外だけでなく日本を含め、ネットバンクを使うなら騙されないようにしてください。しかしながら、ネットバンクは不可欠であり、我が社の提案は次の通りです。- アクセス先をきちんと確認すること。メールのアドレスは信用しない
- ブックマークを活用する。重要な案件であれば公式なサイトでも告知が行われているはずであり、確認ができるはずである。なおファーミング詐欺の場合では役に立ちません
- 少なくとも不信感があれば、問い合わせする。重要なのは電話やメールで問い合わせするのではなく、郵送で確認することです。ファーミング詐欺の場合は公式なサイトにアクセスしたつもりでも、それが偽装されたサイトであるため、問い合わせ先の電話やメールが詐欺グループへ行ってしまうからです
詳しい内容についてはマギシステム様(http://www.magi.co.jp/)にお問い合わせください。
シェアウェア版「携帯FOX」のリリースを予定
値段は800円ぐらいで、その対価として企業が「携帯FOX」を利用するに都合のよい機能の拡充やサポートを行います。フリーソフトで開発しておりますが、自分の中では完成したものとして扱っており、フリーで開発資金を出すことに抵抗を感じております。アフィリエイト広告で資金を調達しておりますが十分でないので、シェアウェアとして資金を得ることにしました。雑誌に載っても、雑誌がもらえるだけでお金がもらえるわけではないのです。どうかご理解ください。
(おりゃぁぁぁぁ)