「ペイント」「ドロー」「フォトレタッチ」の三つの機能を兼ね備えた高機能グラフィックソフト。基本的な編集機能以外にも、スクリプトによる処理の自動化、ラベルやポストカード等への印刷を容易にするテンプレート、ファイルの読み込みに便利なブラウザなどの機能を備えている。「Paint Shop Pro 9.0」は、多彩な機能で定評のある統合グラフィックソフトの最新バージョン。ツールやフィルタの追加・強化、RAW形式データのサポートなど、さまざまな機能向上が図られている。
メイン画面は、複数の画像ファイルを同時に開けるMDI形式の編集エリアと、表示を任意にON/OFFできるパレット類からなる。ウィンドウは通常のオーバーラップ型だけでなく、タブ切り替え式にすることも可能。複数の画像を画面サイズをフルに使って、切り替えながら編集できる。サムネイルを見ながら画像を選択できたり、ファイルサイズなどの情報を確認できたりするファイルビューアウィンドウ(タブ)も用意されている。
描画機能では、ドロー系のペンツールや図形描画ツールと、ブラシ/エアブラシのようなビットマップ編集系のものとがあり、いわゆるお絵描きからPOP作成のような用途までに幅広く対応する。描画はそれぞれベクタレイヤ、ラスタレイヤという異なる性質を持つレイヤに対して行うが、描画ツールを使うと、それに応じたレイヤを自動的に作成してくれる機能がある。
ベクタ/ラスタレイヤとは別に、アートメディアレイヤ、マスクレイヤ、調整レイヤなどのレイヤもある。アートメディアレイヤは、鉛筆画風などの画材のタッチを出す「アートメディア」ツールを使用すると自動的に作成される。マスクレイヤは、透明度を調整して文字通り画像をマスクするもの。調整レイヤは、明るさやコントラストといった基本的なレタッチ処理を直接画像に対して行う代わりにレイヤで処理するもので、元画像の情報を損なうことなく、何度でも調整をやり直せる。
描画ツールには、画像をコピーするように描けるクローンブラシや、部分的に明るさを調整できる覆い焼き/焼き込みブラシ、色相や彩度を調整するブラシなどがあり、画像の細部を細かく修正できる。空などの背景部分を自動的に判定し、そこだけを消してくれる「背景消しゴム」などのユニークなツールもある。
レタッチ機能では、ブラシツールによる細部の修正や、コントラスト/明るさなどの画像全体に対する修正に加え、赤目修正、樽型収差や糸巻き型収差などのレンズのゆがみ補正、色収差の補正などが可能。露出アンダー領域を明るくできる「フィルフラッシュ」や、逆に露出オーバーを抑える「バックライト」などの機能も備えている。
カラーバランスは、色相をスライダーで調整できるほか、パレットで目的の色に最も近い色を選ぶことで全体を調整したり、色褪せた写真をワンタッチで鮮やかに仕上げたりなど、上級者向け機能と初心者にも手軽に使える機能の両方が用意されている。
そのほか、特殊効果系のフィルタ処理や、ドロー機能で描いたオブジェクトを整列させたり、グループ化したりする機能、画像に縁取りをつける「ピクチャフレーム」など、一般的なペイント/ドローソフトが持つ機能の多くをカバーする。
印刷機能では、画像1枚をプリントする通常の印刷のほか、テンプレートを使って市販のラベルシールなどに簡単に印刷できる「レイアウト印刷」が可能。画面のキャプチャやスキャナからの取り込みなども可能だ。
さらに、作業の手順を記録・再生できるスクリプト機能もある。スクリプトは一括処理コマンドの中でも使えるため、複数の画像に対してレタッチやエフェクトなどの処理を連続して行える。
画像形式は、現在使われている主要なものに対応。デジタルカメラのRAW形式データもサポートする。自動アップデート機能で、新しいデータ形式にも随時対応できるようになっている。