たいていのものがデータ化されてコンピュータに収まってしまうご時世ともなると、いろいろと困ったニュースが流れてくる機会も増えてきた。代表的なのは個人情報の流出などで、大規模な名簿を持っているところだと影響度も大きい。最近はデータセキュリティに対する認識が次第に向上してきていて、データのアクセスだけでなく持ち出しや持ち運びにも制限が増えてきている。「アタッシェケース」は、ファイルやフォルダを簡単に暗号化できるソフトだ。操作は非常に簡単で、暗号化したいファイルやフォルダをメイン画面にドロップするだけ。あとはパスワードを入力するだけで、暗号化ファイルができあがる。
ファイルあるいはフォルダごと持ち運ぶことを考えると、使い勝手はほぼ一般に使われるアーカイバと同じだろう。パスワード付きのアーカイバより高度な暗号化技術が使われている上、ちょっと見には暗号化ファイルとわかりにくくすることもできるので、持ち運び時の安心度はずっと上だ。メールでデータを添付する際にも有効だろう。
最近はUSBメモリなども普及し、手の中にすっぽり収まるメディアでギガバイト単位のデータを持ち運びできるようになった。汎用性の面からは、CD-Rのような消去しにくいメディアも相変わらず使われている。可搬性のあるメディアの場合には生データよりも暗号化ファイルの方が好ましい。日常使うものなので、「アタッシェケース」のようにシンプルなやり方は、エンドユーザも利用しやすいと思う。
コマンドラインからの操作も可能で、データの持ち運びだけではなく、複数ユーザ間でのプライバシー保護用途にも使えそうだ。1台のパソコンを複数ユーザで使う場合、あるいはサーバ上のワークエリアを使う場合にも、このようなシンプルな暗号化機構は便利だ。もちろんシステム自体でもユーザローカルエリアの設定はできるわけだが、実際にパソコンを使用する場では、「共有領域にちょっとデータを置きたい」ということがよく発生するものだ。
セキュリティを向上させることができ、簡単な操作で日常のオペレーションを低下させずに済む。ぜひ一度使ってみていただきたい。
(呉 真)