フォトレタッチ、イラスト作成、DTP、Webページ作成など、各種デザイン作業に必要なアプリケーションをひとつのパッケージにした、プロフェッショナル向けの"トータルデザイン環境"。「Adobe Creative Suite」には、収録されているアプリケーションの数によって、Standard版とPremium版がある。Standard版には、フォトレタッチソフト「Photoshop CS」、ベクターグラフィックによる作画ソフト「Illustrator CS」、DTPソフト「InDesing CS」、Webページ向けにファイルサイズ調整や画質の補正などが行える画像加工ソフト「ImageReady CS」の計4本のソフトが含まれる。Premium版ではこれらに加え、Webページ作成/編集ソフト「GoLive CS」、PDF作成/編集ソフト「Acrobat 6.0 Professional」が含まれる。いずれもよく知られたソフトばかりだが、今回「Creative Suite」の登場に合わせてバージョンの一新が行われ、「Acrobat 6.0」以外のすべてのソフト名に、「Creative Suite」を示す「CS」が加えられた。
「Adobe Creative Suite」では、アドビシステムズ社製のソフトではおなじみのツールパレットによる機能選択や、タブごとに切り離し可能なフローティングパレットなどが搭載され、すべてのアプリケーションで共通した操作性を実現している。また、ネットワークを用いた共同作業管理ツールとして、「Creative Suite」で使われるドキュメントファイルのブラウズ、バージョン管理、更新履歴の管理、ファイル検索、ファイル共有などの機能を持つ「Version Cue」が付属する。
「Photoshop CS」は、デジタルカメラで撮影した画像に加工をしたり、ビットマップによるイラストを作成する機能を持つフォトレタッチ/静止画編集ソフト。"フォトレタッチソフトの代名詞"ともいわれる「Photoshop」シリーズの最新バージョンだ。まず、目につく点として、画像ファイルを検索・管理する「ファイルブラウザ」が大幅に機能強化されていることが挙げられる。一見すると、フォルダツリービューとサムネイルで管理する一般的な画像管理ソフトと同じように感じられるが、個々の画像に対してユーザが独自にフラグやキーワードを付加することができ、これらをキーにしてファイルの検索や整理を行えるなど、非常に高い管理機能を持つ。ファイルサイズや画像形式、あるいは(デジタルカメラで撮影された画像の場合)Exifに含まれる情報(撮影されたカメラ機種や解像度、撮影日時など)をキーにしてファイルを検索・整理することが可能だ。
デジタルカメラ関連では、従来はオプションとして別売だった、各種カメラの「Rawファイル」を直接読み込めるようになった。最近のデジタルカメラでは、各カメラ独自の内部情報をすべて含む「Raw(生データ)ファイル」を出力できるものが多い。JPEGなどの汎用画像形式に比べて高画質で編集にも強いが、画像をパソコン上で表示できる形式に変換するには、そのカメラ専用の「現像ソフト」が必要だった。「Photoshop CS」では、代表的なデジタルカメラ向けに現像機能を搭載することで、Rawファイルを直接読み込める。しかも、露出補正やホワイトバランスの調整、色調補正など、専用の現像ソフト並みの機能を搭載していることが特徴。デジタルカメラの対応範囲も広く、昨年末に発売されたばかりのニコンのD2Hなどにも対応している。
画像編集は、RGB各チャンネル16ビット編集に対応する。従来バージョンでも一部の操作で16ビット編集に対応していたが、「Photoshop CS」では対応範囲がさらに拡大された。これにより、色調補正などを行っても、トーンジャンプの発生を最小限に抑えられるようになっている。さらに、ビデオカメラで撮影された画像のように、各ピクセルの縦横比が1:1ではない「長方形ピクセル」にも対応するなど、さまざまな用途の画像編集を行える。
出力機能では、代表的な静止画ファイル形式への出力はもちろん、Macromedia Flash(SWF)やアニメーションGIFの出力などにも対応する。「ImageReady CS」の呼び出し機能を搭載することで、両アプリケーションの間を相互に行き来しながらの編集も可能だ。
なお、Windows版の「Photoshop CS」では、ソフトウェア・アクティベーション機能が搭載されており、使用にあたってはライセンス認証が必要となる。
「Illustrator CS」は、直線や曲線、多角形などを組み合わせてデザイン画像を作成するベクターグラフィック作成・編集ソフト。ベジェ曲線と複数レイヤを用いた表現力の高い作画機能が特徴。文字やオブジェクトを3D形状に変換する効果を新たに搭載したことで、より表現力の高い作画が可能になった。強化点として真っ先に挙げられるのが、アウトラインフォント規格「OpenType」フォントのサポートだ。Windows/Macintosh共通で利用できる同フォントをサポートすることで、どちらのプラットフォーム編集しても同じ結果が得られるほか、フォントの合成、高度な文字組み、段落書式、禁則処理などのサポートにより、デザイン画の中にDTPソフト並みの機能を持つ文章配置を行えるようになった。文字コードとしてUnicodeをサポートすることで、多言語の文字をひとつのドキュメント内で利用することができる。
3D効果機能は、文字や図形に対して押し出し効果を加えたり、軸回転効果を加えたりして、簡単に立体的なイメージを作成する機能。3Dロゴなどを簡単に作成できるようになった。
出力機能では、PDF形式への直接出力に対応。また、Microsoft Office形式への対応を強化することで、Illustratorで作成した図形をOfficeで取り込みやすくなっている。このほか、「ImageReady」の機能を応用することで、Webで表示するのに適した画像を作成する、といったことも行える。
「InDesign CS」は、文章や図形を組み合わせて表現力の高い文書を作成するためのページレイアウト(DTP)ソフト。画面上で、実際に印刷されるレイアウトイメージそのままに、文章の編集や画像の配置などを行える。DTPソフトは長文の編集に苦手、という欠点を克服するため、文章をメインに編集する機能「ストーリーエディタ」を搭載。複数ページにまたがるような長文でもスピーディに入力・編集することが可能だ。フォントや文字サイズなどの設定もストーリーエディタ上から行える。
文章スタイルの定義では、新たにXMLに対応した。外部からXMLファイルを読み込んで、これを「InDesign CS」の文章型定義と比較検証したり、編集内容をXMLファイルに書き出す際に文章型定義を付加したりすることができる。さらに、文字スタイルをXMLタグにマッピングしたり、読み込んだXMLに文字スタイルを適用したりすることも可能だ。
「Photoshop」や「Illustrator」で編集した写真や図の取り込みは当然可能だが、多色刷り印刷をサポートするための分版機能や混合インキのサポートなど、高度な印刷用途にも対応する。そのほかにも、PDFファイルへの直接出力をサポート。Webで利用するために「GoLive CS」上で配置を編集する「GoLiveパッケージ」機能も搭載する。
「GoLive CS」は、対話的にWebページを作成・編集・管理できるWebデザインソフト。実際のWebレイアウトイメージ上で編集を行えるほか、HTMLソースを合わせて表示しながら編集することも可能だ。HTMLの編集機能では、CSS Level 2とCSS-Pに対応しており、ページ内の表示デザインをスタイルシートで一括管理することができる。文字や段落に対してスタイルを適用するのは、ポップアップされたスタイルリストからスタイルを選ぶだけでよい。スタイルシートを変更すると、そのスタイルを用いた表示要素は自動的に更新されるため、レイアウト画面上でリアルタイムにスタイル変更の効果を確認できる。
「GoLive」ならではの機能としては、「スマートオブジェクト」機能が挙げられる。これはページ内に貼り付ける要素として「スマートPhotoshopオブジェクト」や「スマートIllustratorオブジェクト」といった、他の「Creative Suite」アプリケーションのオブジェクトを利用できる機能。単に「Photoshop」「Illustrator」で作成された画像を貼り付けるのとは異なり、表示するレイヤをあとから変更したり、画像レイヤの最適化状態を編集したりすることができる。
PDFサポートが強化され、PDF内のリンクを直接編集できるほか、ページレイアウトやサイト設計図をPDFに変換できるようになった。クライアント側で、「GoLive CS」によって作成されたページのテキストなどを修正できるツール「GoLive Co-Author」も用意されている。