「Microsoft Dungeon Siege」は、「Total Annihilation」や「4D Boxing」などのゲームデザイナーとして知られるクリス・テイラー氏(Chris Taylor:米・Gas Powered Games社社長兼ゲームデザイナー)が2002年春、満を持して世に送り出したネットワーク対応のロールプレイングゲーム。海外で英語版が発売されて間もなく、日本語版も発売され、当時の話題を集めた。独自開発の俯瞰型3D描画エンジンは、クエストなどのストーリーシーンとゲーム画面をシームレスに移行させるほどの高性能なもので、壮大な雰囲気を醸し出すジェレミー・ソウル氏による音楽とともに高い評価を得た。シングルプレイ/マルチプレイのいずれでもゲームを楽しむことができるほか、キャラクタも両プレイモードで共通に使用できることから、ネットワークゲームのおもしろさとシングルプレイゲームの気軽さを兼ね備えた作品といえる。
この「Dungeon Siege」のオリジナル版発売から2年を待たずに、拡張パック「Legends of Aranna(アランナの伝説)」が発売されることになった。拡張パックといっても、オリジナル版を同梱した形で、どちらかといえばリメイク版と呼んだ方が正しいのかもしれない。オリジナル版を含むため、「Legends of Aranna」をプレイするために、新たにオリジナル版を買い求める必要はない。ただしキャラクタデータは、オリジナル版のものを引き継いてプレイできるため、オリジナル版のプレイが無駄になるわけではない。ただし「Legends of Aranna」では、クエストの進行状況などがリセットされるため、キャラクタのレベルが高くても、最初からストーリーを楽しむことになる。
神秘の地、アランナ
ストーリーは、エッブ王国の平和を取り戻した前回の冒険を耳にし、自らも冒険に出る日を待ちこがれていた若者が旅立つというもの。エッブ王国は、いうまでもなく「Dungeon Siege」の冒険の舞台だ。自分の両親も冒険者だったことを知った若者が旅立つのは、両親が活躍した神秘の地アランナ──オリジナル版とは直接関連性のない外伝的なストーリーであるため、レベル1の新規キャラクタでも、旧作のシナリオをトレースすることなく、アランナの冒険に挑戦することができる点は興味深い。
アランナには数千年に及ぶ独自の歴史があり、そこに暮らす住民も含めて、エッブ王国とは別の生態系を持つようだ。例えば、ウトラエの民と呼ばれる種族は、太古の時代からアランナを支配し、さまざまな魔法や機械などを発明するなど、栄華を誇っていた。しかし、同じアランナに住むザウラスク族やハサット族の生活圏を圧迫し続けたことで、大きな戦乱を招いてしまう。これらの戦争と内乱により、いまやかつての支配力はない……というように、エッブ王国とは別の歴史がある。
ザウラスク族は恐竜に似たは虫類的な外観をもつ種族で、ハサット族はネコに似た亜人種であるが、両者ともウトラエの民からは奴隷として酷使されてきた。戦争により独立を勝ち得たものの、未だに発展途上の段階にある。これら以外にもワニに似たドロック、巨大な体躯を誇るハーフジャイアントなどがアランナには暮らしており、この地を徘徊するモンスターも、エッブ王国では見られない独自の種が存在するようだ。
「Legends of Aranna」に盛り込まれた多くの追加要素
アランナの地を冒険することで、ウラトエの民が編み出した新魔法を得ることができる。強力なモンスターに術者自身が変身する転異魔法、接近戦闘と組み合わせることで多くのダメージを期待できるオーブ魔法などは、これまでになかった新カテゴリーの魔法だ。
もともとスキル制によるキャラクタ成長システムを持つ「Dungeon Siege」は、得意不得意はあるにしても、剣や杖などを使う「接近戦闘」、弓や銃などを使う「遠隔戦闘」そして「自然魔法」と「戦闘魔法」の四つに分類された戦闘方法のうち、複数のスキルを習熟できる。根気があれば、すべてのスキルを極めることも可能だ。このためオーブ魔法のような、呪文詠唱後も継続的にダメージを与える魔法は、その他のスキルによる戦闘と併用しやすく、「Dungeon Siege」のゲームシステムに合致している。
新規に追加されたアイテムの中には、かなり強力なものが含まれている。これまでのマジックアイテムは、白:ノーマル、青:2つの魔法効果、薄紫:4から5つの魔法効果、黄:6から8つの魔法効果、茶:マイナスの魔法効果を含むアイテムというように、アイテムの説明文の背景色によって効果の数や高低が決まっていた。さらに視覚効果の派手なインビューアイテム(紫)、同じ組み合わせの3から5個のアイテムを同時に装備することで効果を増すセットアイテム(水色)が追加された。より多くのアイテムを所持するためのリュックサックが導入されたことも含めて、アイテム収集の楽しみが広がっている。
魔法やアイテムなどのゲームデータの追加だけではなく、ユーザインタフェースの改善も著しい。パーティメンバー全員が所持しているポーション類を均等に分配する機能、キャラクタを移動させずに攻撃範囲を限定する操作(【Shift】キー+クリック)、装備していない所持アイテムを指定した条件で即座に売却する「すべて換金ボタン」、所持アイテムの自動整理機能、マルチプレイヤーゲームでの途中保存、地雷のような罠「グリフ」など、このほかにも書ききれないほどの追加・変更点がある。
膨大なクエストが織りなすシナリオは攻略要素満点で、オリジナル版「Dungeon Siege」のプレイヤーも再度「Legends of Aranna」に挑戦することで、あのときの楽しさが新鮮に蘇るだろう。また、それほどシステムや操作が複雑なゲームではないので、オンラインゲーム初心者にも勧めたいタイトルだ。
【編集部注】本レビューは、マイクロソフト株式会社から提供されたβ版をもとにまとめられています。実際の製品版では、内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。