ソフトを開発しようと思った動機、背景
コンピュータを使って分子の安定な構造を求めたり、化学反応を調べたりすることを計算化学といいますが、計算をさせるためには、まず分子をコンピュータの中で組み立てる作業(分子モデリング)が必要になります。分子モデルを作成するソフトは、フリー、商用ともにすでにいくつかありましたが、グラフィックスの質、価格、モデリングに必要な機能に関して満足できるものがありませんでした。それなら自分で作ろうと思って作ったのが「Facio」です。Facioとはラテン語で「私は作る」という意味ですが、ソフトの名称は、これに由来しています。開発中に苦労した点
複雑な分子のモデリングには、分子軌道法や分子力学などによる構造最適化との連携が不可欠です。「Facio」では、「GAMESS」という分子軌道法のプログラムとの連携を図り、計算で得られた最適化構造を「Facio」のモデルに直ちに反映させることを行っていますが、スムーズに連携させる点に苦労しました。
複雑で巨大な分子を組み立てるために導入した機能が、すでに表示されているモデルの上に、二番目の分子のモデルを読み込む機能です。他のモデリングソフトでも同様の機能を持つものがありますが、「Facio」では、読みこんだ二番目の分子の相対的な位置や角度を微調整できる点が特徴です。二つのデータを融合すると同時に、二番目の分子のデータ部分を区別して保持しておく点が難しかったところです。
モデリング以外では、分子の座標や結合情報のフォーマットとしてPDB(Protein Data Bank)を採用している関係上、タンパク質や核酸の構造もきちんと表示できなければ不十分だと思い、これらの生体高分子の取り扱いにかなり時間をさきました。タンパク質や核酸のPDBファイルは、もともと実験的に求めた構造データであるので、欠落した部分があったりして非常に複雑で、自動で解析させるのには苦労しました。しかし、この点では、まだまだ「RasMol」にはかないません。
今後のバージョンアップ予定
分子軌道の3D表示機能を実装する予定です。
(ぐう猫)