DETECTIVE EIN -名探偵アイン-

 フェイとジェットは、アインの散歩をしながら聞き込みをしていた。その時立ち寄ったジャズ喫茶「BlueJazz」で事件は起こった。
 二人はマスターに話を聞くためにカウンターに座る。回りを見渡すと、客は3〜4人しかいないが店内はかなり落ちついた様子で照明も薄暗かった。ジェットの頭だけが光っている、というのは余談である。
「だんな、犬はこまるな」
「まぁまぁ。客も少ししかいないし、いいだろう」
「しょうがねぇな」
 といいつつ、マスターはノンアルコールのビールを差し出した。
 5人組のバンドがそでから出てきた。コントラバス、ピアノ、パーカッションそして、サックスが2人。そのうち3人が片手にウイスキーを握っていた。
 演奏をはじめるとその音楽がすぐ、悲鳴へと変わった。
 生演奏をしていたバンドの1人が赤い液体をはき倒れている。ジェットはすばやく立ちあがり、駆け寄った。
「こりゃまずい。救急車を呼んでくれ」
 ジェットは元警察官のクセであたりを探った。彼が飲んでいたウイスキーにカプセルが浮かんでいるのが見えた。

 倒れたのはサックスの1人で病院で現在も治療を受けているそうだ。苛性ソーダを飲んだらしい。早速、地元警察が店にやって来て現場検証と事情聴取をはじめた。カプセルのおかげでジェットとフェイ、ほかの3、4人の客は容疑者からはすぐに外れたようだが、事件が起こった時の状況を聞かれた。フェイは面倒そうにしていたが、ジェットは興味本位から他の人の話まで聞いていた。

「ウイスキーを持って演奏していたのはコントラバスとピアノとサックスの倒れた方だ。彼らはいつも演奏前にわざわざ新しいウイスキーをあけていたそうだ。そして、演奏終了と共に飲み終わる。それを知っているのはバンドメンバーと常連客。しかし、演奏が始まってサックスが倒れるまでウイスキーに触った客はいないし、メンバーに中でそでから出てきてから触ったやつはいない。しかもそのカプセルは唾液としか反応しないタイプでウイスキーに浮いていたカプセルの中から苛性ソーダが出てきた。つまり、サックスはカプセルを飲み倒れた。楽屋でカプセルが混入された確率が高いわけだ。つまり犯人はバンド仲間ってことになるな。サックスの奴は手が早くて全メンバーから恨まれてたそうだし間違い無いな」
 うれしそうに話すジェットを横目にフェイはさっきのビールを一口飲む。すると口の中になにかが入った。
「!!」
 ビールを見ると何かが2.3粒浮いている。状況が状況だけに急いで吐き出すとピーナッツが口から転がり出た。人間以外の動物は笑わないとよく言うが、フェイがその時見たアインは確実に笑い、皿のピーナッツを食べていた。ジェットは後姿が笑っていた。フェイは、恥ずかしかった、というよりは怒りを覚えた。
「ひ、人がカプセル飲んで死んだときに口の中に何か入ったら驚くに決まってるでしょ!」
「お前なら狙われかねんな」
 その時ファイにある考えが浮かんだ。
「ねぇ。普通、口に知らない何かが入ったら吐き出すわよね」
「普通はな。」
「なぜあのサックスはカプセルを吐き出さなかったのかしら?」
「……それもそうだな。しかし、あのカプセルだと溶けきるのに2秒とかからない」
「2秒もあれば吐き出せるんじゃないかしら。しかも、わざわざ2錠以上カプセルを入れるのも変だわ。1錠で十分じゃない」
「じゃあ、いったい何に毒が入ってたと言うんだ」
「…サックスの楽器そのものとか」
「残念ながら、サックスからは奴の唾液しか検出されなかった」
「……?」
 アインがビールのコップにじゃれていた。丁度その時、ジェットがビールをとって飲もうとした。
「ちょっと!そっちはあたしのよ!」
「ん?違うだろ。こっちが俺のだろ」
「よく見てみなさいよ。そっちには口紅がついてるでしょ!アインが場所を入れ替えたのよ」
「あ?ん、ほんとだ。同じコップだからわからなかったな」
 同じコップ…。フェイは突然ひらめいた。きっとこれが漫画やアニメだったら絶対「マメ電球」が頭の上で光っていたところだろう、と彼女は密かに思った。
「私、犯人わかっちゃった」
「なんだと?いったいだれなんだよ」
「当たったらいくらかしら?」
「よし、いいだろう。当たったら3万ウーロン、はずれたら逆にもらう」
「いいわ」
 そういって、フェイは立ちあがった。
「ちょっとそこの警官さん、もう1人のサックス吹きのサックスを調べて下さらない?」

 結局、ジェットは3万ウーロンを払うことになった。
「よくわかったもんだな」
「カプセルはダミー。なら、どこに毒が?サックスしかないでしょ?同じサックスならドサクサにまぎれて取り換えても見られてなけりゃわからない。苛性ソーダって言うのは水酸化ナトリウムのことでしょ?空気に触れると液体化して、サックスに付着していても目立たないし」
「なるほどな、確かにもう1人のサックスから毒が検出されて、なんだかんだで自白した。しかし、倒れた方のサックスからは倒れたやつの唾液しか検出されなかった。これはどういうことだ?」
「…ソーセージ…」
「あ?」
「その唾液はどうやって倒れた彼のものだと判別したの?」
「唾液のDNAとやつのDNAとの一致だ」
「一卵性双生児の場合は確かDNAや、血液型とかがおなじなのよね〜アイン?」
 アインが魚肉ソーセージをくわえていたのは言うまでもない。
「まさか。全然似ていなかったぞ?」
「整形手術って知らないの?今は金さえあれば簡単に好きな顔になれるのよ。髪の毛だって簡単に増やせるのよ?もっとも、増えたら誰かわからなくなる人もいるけどね」
「……何が言いたいんだ?」
 フェイがめずらしくアインを撫でながら言った。
「……過去は誰にもわからないのよ…ましてや他人には絶対に…」

  SEE YOU DATA DOG...

作/りゅういち

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