Space Monkeys

環境保護団体「スペースウォリアーズ」のメンバーは全部で[7人]だった。
しかし、のちにISSPが位相差空間にどうにか入りこみ調査を開始した時、猿の数は[9匹]だったという。

以下は1830年に存在したウィリーという精神障害者の手記である。


 2071年、60分前にモンキービジネスのウイルスに感染されずにすんだ[3人]がピートの部屋にたどり着いたのは12分前だった。
 一人はトゥインクル。通称ママで親しまれていた女だ。二人目はピート、そしてもう一人はわたしだ。

「ど、どうしようかママ!」
「落ち着きなさいウィリー。脱出の方法を考えるのです。冷静にね。」
 そういうトィンクルの腕は小刻みに震えていた。
「そうだ、ママ!物質転送装置を使えば良いんだ!」
「なにいってんだよピート!お前はSFの読みすぎなんだよ!」
「……とりあえず、ウイルスを何とかしないといけないわ…。ウィリー、解毒剤やその類の薬などを作る事はできないのかしら…?」
「うん、ママ。とりあえずデータがないとわからないよ…。」
「まてよ…、物質転送装置と時間移動機能をつかえば…!ママ!みんなも助けられるよ!」
「ピート!お前は少し黙ってろ!」
「ウィリー、あのコンピューターは使えないかしら?」
 わたしはコンピューターのスイッチを入れてみた。…なんの応答もない。何度も何度も、誰も出ないインターフォンを押す様にコンピューターのスイッチを押したが何もつかない。
 わたしは後悔した。なぜわたしが、こんな目にあわなきゃけないんだ。こんな団体、すぐにでもやめたかったのに。時計を見るとピートの部屋に来てから3分ほど経っていた。
「だめだよママ…!」
 振り向いた瞬間、二人は消えた。大きく深呼吸して、部屋を見まわした。二人ともどこにもいなかった。そこにあるのは一つの装置だった。
 その装置には、[00015]と書かれたメモリと、[Y/D/M]と書かれて[M]の方に倒れているレバー、○が並んだ表と、その上レコード・プレイヤーの針のようなものが乗っていて、[現在位置]というところのボタンが光っていた。そして、[E]とかかれたメーターは[F]の近くを指していた。
「ま、まさか…。」
 そう、あとにわかった事だがそれはタイムマシンだったのだ。確かにピートはおかしいところがたくさんあった(実際に15年間冥王星に入っていた事もあった)。わけのわからない物をつくったり、しゃべったりしていた。古代バビロニア人やら、時間のパラドックスと、パラレルワールドの話しなど、あたまがおかしいと思っていたのだが。
「[2人]は、15分前のこの宇宙船にもどったのか!?」
 それならば、[2人]は間違いなく、15分前のこの部屋に着くだけだ。それなのになぜ、我々が約15分前にこの部屋に入ってきたとき、[2人]は存在しなかったのだろうか?
 その答えはすぐに出た(しかし、のちにこの説が正しいかどうかは疑問になったが)。タイムマシンによる時間移動には2つの説がある。一つが「平行世界説」もう一つが「未来影響説」である(ピートから聞いたきちがい講義がこんな時役に立つとは思ってもみなかった)。

 平行世界説、というのが、いわゆるパラレルワールドで、いくつもの世界が平行に存在しているという説である。たとえば、過去に戻り父を殺害するとしよう。つまりその時点で2つの平行世界ができている。[父が母と結婚しない世界]と[父と母が結婚した世界]である。自分は消えない。なぜなら自分は[父と母が結婚した世界]から来たからで、[父が母と結婚しない世界]の未来に自分が生まれようが生まれまいが存在するのである。
 未来影響説、というのが、その逆である、父を殺害すると当然、自分も消える。自分は未来に生まれないからだ。

 説としては平行世界説が正しいのであって、彼らは今や違う次元に存在している。よって、15分前に彼らはこの部屋にいなかったのだ、と考えたのだ。
 そして、わたしはここから逃れる方法はこれを使うしかないと考えた。早速、機械をよくよく調べてみる事にした。
 まず、この[00015]というのが、戻る時間を指定するのだろう。
 [Y/D/M]と書かれたレバーは、[M]というほうに倒れていた。[M]が[Minute]の略だと考えると[D]は[Day]、[Y]は[Year]の略になると考えられる、するとみんなを助けに行くといっていたピートが15分前に行ったのである。ここで一つの疑問が浮かんだ。60分前にウイルスが広がったのに15分前ではみんなを助けられないのでは?しかし15日前にいっては意味がないし、15年前ではもっと意味がない。わたしはこれを無視する事にした(しかし後になって考えれば、妥当な時間設定だったのかもしれない)。
 惑星の見取り図は○が8つと[太陽]と書いてあった。わたしはこう考えた。

太陽 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
   金 地 火 カ ガ イ タ 冥

太陽、金星、地球、火星、カリスト、ガニメデ、イオ、タイタン、冥王星と並んでいるのだ、と。人が住める惑星、衛星が並んでいるのだ。もし、惑星順だったら、水金地火木土天海冥、と、9つになり円が一つたりない。そして、この針で場所をしていするのだ(ここでのわたしの勘違いは非常に幸運であり不幸だったといえる)。
 [現在地]というのは現在地に針を合わせる機能と思える。
 [E]というのは[Energy]の略で、[F]は[Full]の略。これは車と一緒だったからすぐにわかった。メーターは[F]の近くを指している。というか、ほとんど[F]である。まだまだ時間旅行はできそうでだ。
 わたしはもう、スペースウォリアーズはこりごりだった。助けに行く必要もない、と考え、どこの惑星のどこの時間に戻るかを考えた。
 前すぎても、ゲート事故にであうのはイヤだし、最近すぎてもせっかく過去に戻るのに金儲けができない(これは、競馬などでもうけるという意味で)。火星に行くというのはもう決めていた。競馬の結果を一番よく知っている競馬場もあったし競馬で稼げば、いい暮しができるからだ。
 考えた結果、41年前つまり2030年の火星に行くことにした。この時の火星で大もうけすれば、まだ開発途上だからいくらでも、金を増やす方法があるだろうと考えて。
 まず、メーターを[00041]にあわせ、[Y/D/M]のレバーを[Y]にいれ、針を火星に合わせた。現在地のボタンをOFFにした。そして、稼動スイッチを押す。次の瞬間俺が見たのは[E]のメーターが、一気に[Empty]に行ったところだった。

 そして今、わたしは1830年前の地球にいる。そして、精神病扱いされているのだ。

 最初はわけがわからなかった。なぜ、メーターを[00041]に合わせたのに241年前に戻ってきたのか。しかも、なぜ地球に?

 原因がわかったのは次の日の晩だった。数字は10進法ではなく、○の配列は惑星の配列だったのだ。

 まずメーターを[00041]と合せたのになぜ241年前に来てしまったのか。ピートが話していた古代バビロニア人を知っていれば、容易に解けた問題である。古代バビロニア人は平方根や立方根などを扱う高度な数学を知っていたが、数字は60進法を使っていた。60まで行くとケタが一つ上がるという事だ。なぜなら60という数字を定数にすると2、3、4、5、6、10、12、15、20、30とたくさんの数字で割りきることができるのである。10は2、5と、2つの数でしか割りきれない。
 [00041]を60進法で計算すると60×4+1=241となり、わたしは241年前に来たことになる。
 ピートたちが、15分前に行ったと思っていたのも、実は60×1+5=65分前に行ったのだからうなずける。

 そしてなぜ地球に来たか。考え方が間違っていたのだ。やはり、水金地火木土天海、という並びだったのだ。冥王星がなかったのは何故かと考えたが、ピートは15年間冥王星に入ってた事があったのだ。間違っても、もう2度と冥王星には行きたくなかったのだろう。

太陽 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
   金 地 火 カ ガ イ タ 冥
   水 金 地 火 木 土 天 海 [冥]

この話しは、わたしウィリーが生きた証として2071年まで伝えていきたい。


ここで手記は終わっている。

「スペースウォリアーズ」の船に乗っていた猿のなかで同じDNAの猿が[2匹×2組=4人]いたという。しかし、手記は2068年にそれを見つけた赤毛のエドという女の子にチョコレートと間違われ食べられていた。

 SEE YOU SPACE MONKEYS...


作/りゅういち

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