ジェットの失敗

 暇な時、いやたいていの日は暇なのだが。ビバップ号はたいていいつも決まったところに停泊する。そこが一応正式の「住所」だからだ。ISSPに届けてあるジェットの居場所という意味でもある。
 ISSPというところは厄介なところで、退職してからもその住所が定まってないとお咎めがあるのである。でも、ジェットはまじめにきちんと届けていたのである。
 なぜかというとそれなりに裏情報を流してくれる元仲間が結構いるので、助かっているからだ。
 さて、そんな平和的な暇な日はそれぞれに好きなことをしてすごしている。それでも、ジェットは時々、「飯はいるのか」「何時に帰る」とかまるで母親のように言うのである。
 その日も同じように暇な日だった。スパイクは釣りをしていたし、エドとアインは甲板で駆け回り時々、日光浴をしているフェイに怒鳴られていた。
「おい。俺は出かけてくる、昼飯は好きにしてくれ。」
「はーい。おみやげねぇ。」
エドが一人だけ元気に手を振った。ジェットは珍しくも歩いて出かけていった。
フェイが怪しいから追いかけるといきまいていたが、スパイクに軽くたしなめられ諦めたようだった。

当のジェットは狭い路地を鼻歌交じりに歩いていった。
ついたところは図書館だった。なれた様子で中に入り、わき目も振らずに「児童書」とかかれたエリアに入った。図書館といってもほとんどがデジタル文庫といわれるモニタに出る文字を読むタイプのものだった。
 ジェットは自分の周りから、小さな子供を連れた母親が慌てて席を離れていくのに少し傷つきながら、モニタに向かい検索をはじめた。
「これはもう話したな、お、なかなか面白そうだ・・・。アーだめだな。何だコリャ、こんな話はできねぇな・・・。」
ぶつぶつ言いながら、次から次へと童話を読んでいく。
この日、目にとまったのは「アン○○マン」とかかれたシリーズ物だった。
内容をよく確かめるために真剣に読み始め、だんだんジェットの顔が難しくなってきた。
「これは・・・。どうしたらいいんだ・・・。こいつはヒーローなのか・・・。うーん。ものすごい突っ込まれそうな話だな。」
閉館時間も迫り(そう一日中いたのだ)、ジェットは席を立った。

次の日、早速新しく仕入れた話を甲板で洗濯物を干しながら、エドにしてやった。
「そいつはお腹のすいた奴に自分の顔をちぎって与えたんだ。」
「かお、かお、おいしいの?」
「すごくうまかったらしいな。で、顔が少なくなると力が出ないから、また新しい顔と取り替えるんだ。」
「それはホラーなのか?」
案の定スパイクが突っ込んできた。
「いや、童話だ。」
「で、そいつは何を言いたいんだ。」
「尊い自己犠牲の精神じゃないのか?」
「じこぎせいって?」
「自分はどうなってもいいから誰かを助けてやろうって言う、偽善者のことだろ。」
スパイクは不機嫌に言った。
「ま、実際そんな奇特な奴は少ないのは確かだな。」
ジェットはため息交じりで言った。
「エド、わかんないー。何々?おいしいもの?」
「解りやすく言うとな、絶対にフェイじゃないってことだ。」
「うーん。フェイは自己犠牲じゃないの?そう?」
「そういうことだ。」
言いながら何か、どっかで間違えたんじゃないかという気持ちがジェットを支配していた。
 すぱいくはジェットの後ろにフェイがいるのに気がついて、その場をそそくさと離れた。
その後の甲板で何が起きたかは想像した通りの事だろう。その日の晩飯はいつまでたっても出てこなかった。

 フェイが少し後悔していたことはアインしか知らない・・・。

  END

作/猫宮よしき

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