Walk in the Rain

‥雨が止まない。
でも身体が芯から冷えてしまったのは、雨のせいばかりじゃない。
何時間待っても女はこない。
わかっていた。あの日、俺の渡したメモが破片となって降り注いだ時に。
あの日も、雨だった。

俺は約束の場所にきた。
あいつのために赤い薔薇の花束を買って。
そして待った。何時間も。
煙草の吸い殻を濡れたアスファルトで踏みつぶしながら。

俺は抜ける。計画通りに。
今更何の意味もないが、組織に残る意味もない。
いや、俺の人生そのものにもさして意味はない。
俺は恩人を見限り、相棒を裏切り、そして半身を失った。
これが俺の人生のすべてだ。

冷え切った身体で立ち上がり、歩き出す。
一人きりで、戦場に向かって、雨の中を。
こぼれ落ちた赤い薔薇が、灰色の景色の中で浮き上がって見える。
でも俺は振り向かない。

今までの事をすべて忘れて、俺は眠りにつくんだ。
これからは醒めない夢を見ていたい。
そして願わくは、楽しい夢を‥

作/亜巳

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