アヴァンシア 2003.1.27

名前だけ聞いてピンと来る人は一体どのくらいいるんだろうか? 「車だよね、ホンダだっけ?」と答える人もいるにはいるが続く答えは決まってる。「どんなんだっけ…?」

どうしてこんなにマイナーなのか本当に不思議極まりないが、当然というか売れていない。ホンダもこの先売れる見込みがないと思っているふしがあって、販促活動も非常に弱い。ディーラーの営業担当に聞いた話では今年の7月で終了ではないかとのことだ。

はじめてアヴァンシアを知ったのはホンダウエルカムプラザ青山だった。1999年の11月だ。当時車を買ったばかりだったので、間違いなくこの時期だと覚えている。目的もなく訪れた青山には発売直後のアヴァンシアが室内の目立つ場所に鎮座していた。内外装ともベージュのアヴァンシアのシートに座って品の良い車が出たな、と。そのくらいの感想しかなかった。



この時乗っていた車は見た目と軽快なフィーリングを気に入って買った車だったのだが、何年か乗ると乗り心地が悪いわりに高速域で踏ん張りがなく、ただ騒々しいだけの車に感じてきた。おのずと乗り替えを考え出したのだが、これが2001年の秋の話。ただワタクシ仕事で車を使う関係で次車には絶対外せない条件があった。まれにモニターやPC等を箱ごと乗せることがあるのだ。小型ハッチバックで用は足りるがセダンでは役不足。

さらに当然ながら自分自身の好みから来る要望もある。
まず若くなくなったので落ち着いて乗れること→しかし走って楽しめる程度「クルマ」であって欲しい。そして狭苦しい23区内で乗るのでコンパクトなほうがいい→とは言いつつコンパクトと矛盾するが長距離が楽なほうがありがたい。家族を乗せることも考えるとコンパクトカーは避けるべきだろうか。まあ最悪タワーパーキングに入庫できれば良しとしよう。

途中経過は省くが、そういった方向でいろいろ物色して結局アヴァンシアを買った訳だ。
この頃出てきたヌーベルバーグという新グレードを試乗して足回りがとても気に入った事と、内外装とも適度な落ち着きがあること、そして値頃感ある価格設定は魅力的だった。
商談を始めてからは競合もさせず年明け早々に発注、3月1日から乗り始めることができた。



今どきナビがCDであったり荷室の形状が使いにくかったりと問題はあるが、全体を見るとかなり出来の良い車だと思う。売れてないのは好みが左右される外観や、発売当初にマーケットを見誤ったせいとされているようだ。

ちなみにその発売当初のマーケットはFACT BOOKに詳しく書いてある。要するにポストミニバンってことのようだ。この頃オデッセイを買い支えていた世代の人たちが次に乗る(ミニバン以外の)車のひとつってことで提案したつもりだったらしい。そんな訳でアヴァンシアは3列目シートのないオデッセイと言われることもある。実際、下の写真を見てもらえれば分かるがインパネのデザインやシートテーブル等のユーティリティがなんとなく似ている。当然ちゃんと見るとまるで別物。なんだか金型代が勿体ない気もするが、さすがに共通という訳にはいかなかったんだろう。アヴァンシアはそのほかの細かいところでもホンダ車としては贅沢で目新しい造り方をされているらしい。



しかしですね、ちょっと考えてもオデッセイの3列目シートを使わなくなった人が取り回しやユーティリティに便利な変化のないアヴァンシアを買う理由がないですよね。高級感らしきものはあるかもしれないけど、うーん… 普通は3列目シートがあって困る物でもないし、この大きさとユーティリティが良ければ再びオデッセイを買うんじゃないのかしら。まあだからと言ってワタクシにはポストミニバンが見えてこないのでホンダの試みをバカにはできない。というか、この頃はホンダ以外のメーカーもこんな試みをやってたような気がします、えぇ。新しいジャンルでヒット作を出せば他社が追随してくるまでは市場を独占できますもんね。

まあアヴァンシアはその辺商業的に失敗したもんで、マイナーチェンジではヌーベルバーグという新設グレードで若者向けの市場にシフトしてくる作戦にきました。安直と言えば安直なマイナーチェンジでして、ワゴンじゃないのにワゴンと言い切り、明るいボディカラーを追加、車高を落として内装を黒くしちゃえば分かりやすい形になるんじゃないの?と見え見え。それでも新デザインのグリルやクリアレンズの採用も併せて驚くほどイメージは変わりましたな、ホントに。やはりホンダはこういうマーケットが得意ってことですかね? 私自身、アヴァンシアは好きな部類ではあるものの自分が乗るにはまだ早いというイメージだったのが、ヌーベルバーグの登場で一気に身近な存在になりましたもん。

そんなこんなでアヴァンシア・ヌーベルバーグ、結構気に入って乗ってます。
ボディのわりに排気量が小さいので非力感を受けることもたまにありますが、ワタクシ的にはまったく問題ない範囲。 それより普段は実にゆったりと乗れるのに、ムチを入れればそれなりに悪くないエンジン音を出して気持ちよく回りきり、ステアリングを回せば大きめのボディを驚くほど素直に曲げ込んでいく、この辺のバランスの良さは恐れ入ります。当たり前ながらスペックより実感覚のほうが大切ですな。

高速道路では追い越し加速時に多少つらい以外は思った以上に楽。普通のコンディションだと風切り音がほとんど聞こえないですね。FFだからかボディが重いからか、はたまた足回りのせいかは分からんですが走行感覚自体も結構安定してます。

でもって、その足回りはかなりナイスだと思います。フワフワではないのにタイヤが非常に良く動いてるのがよくわかります。バネ感って言えばいいの? 揺り戻しが来る訳でもなく足の動きは一発のストロークで吸収して収束。本当に地面に吸い付いているような感覚があって気持ちいいです。乗り心地良く、踏ん張りも効いてる。ボキャの足りないワタクシにはそんなふうにしか言えません。いわゆるスポーツ足ではないと思います。とても楽しい実用足と言うと怒られますかね?

そういう訳でこの車は今後もいろいろ登場させてみたかったりもします、はい。