シェアウェアが多過ぎる


 シェアウェアが多過ぎる、と率直に思う。
 いやいや、もちろん反論はすべて正しい。そんなことはわかっていて、なおも感情的につい思ってしまうのだ、シェアウェアが多過ぎる、と。したがって、これはオンラインにおけるシェアウェアの増加について云々するのではなく、自分がなんでそんなことを思ってしまうのかという、その分析である。

 今現在、これを書いている時点で、このホームページに私が上げているソフトは、すべてフリーウェアである。この中で特に売りになっているのは「元素周期表」で、これはあちこちの雑誌やCD−ROMに掲載していただいた。そもそもここでこんな風にベクターデザインのホームページ・ディレクトリを使わせていただいているのも、このソフトのおかげである(つまり、フリーでもある程度は儲かったのである。本とかもいろいろ貰ったし)。
 ところで、私は何でこれをフリーとしたのか。一つは簡単、自信がなかったからだ。そもそもどう考えてもこれが何かの役に立つのは、ある程度この分野の専門の人――それも、ちょっと深く化学をやった人にはもう物足りないだろう。だから、例え100円といえども値段を付けたらダウンロード数は格段に減るだろうし、それではソフトを作った最大の理由――自己顕示欲が満たせない。そう、私は目立ちたくてソフトを作っているのだ。それに、ドキュメントの内容に自信がない。化学のソフトである限り、その内容が正しくなくてはなんにもならない。しかし、こういった専門分野については、個人の力ではいくら勉強しても限りがある。現に明らかな間違いを指摘してくれた人がいて、バージョンアップでは大いに参考になった。これには、本当に感謝している。それにしても、もしも使用料をとっていたら、とても恥ずかしい結果になっただろう。登録した人全員に修正版を送らねばならない。そんな元気はとてもない。
 しかしそれよりも重要なのは、LHAやFD、MIMPI、DDWINなどの素晴らしいフリーソフトへの感謝である。LHAなど、あれを一人100円ででも売っていたら、一財産になったかも知れない。そもそも、オンラインソフトの発展そのものが、あのソフトに起因するところ大である。にもかかわらず、LHAもFDも無料だ。あれらが公開された時代性なども背景にあるのだろうが、少なくとも自分のソフトをLHAと同じBBSに公開して有料にする勇気が私にはなかった。しかも、まさにそのLHAで圧縮して……。
 今私は、いくつかのシェアウェアを送金して便利に使っている。それらは値段も性能も妥当だと思ったからユーザー登録をし、後悔はしていない。実際、その性能からいえば、多くのシェアウェアはとても安いと思う。それでも時々思うのだ。もっと性能は落ちてもいいから、フリーなものが増えないものかと。
 ソフトウェアにもいろいろあると思う。例えば市販のワープロソフトのように、多くの機能を有して巨大化し、便利ではあるがすべてを使い切るのがなかなか大変なもの。こういう大規模なソフトは、やはりアマチュアの日曜プログラマには手に負えないだろう。どうしても個々のモジュールや関数、DLLを分担して作る組織が必要だ。それとは反対に、たった一つのことしか出来ない木偶の坊だが、それがあるととてもいいというようなものもある。例えばこのホームページに上げておいた「アイコンのかくれんぼ」は、そういったソフトを目指している。うまくいったかどうかはわからないが……。そして、これこそがアマチュアソフトの大きな意義である。こんなもの、ちゃんとした会社では絶対に作ってくれない。売ろうとしても値段が安過ぎてコスト的に見合わないからだ(こんなものに10000円払う人はいるまい)。そして、こういった小さなソフトは、さすがにフリーでいいと思う。50円でユーザー登録では何ともせこい。

 結局こういうことだろうか。立派なソフトをシェアウェアで流すのはもちろんかまわないが、もっと小粒で機能も少なくていいから、ちょっと便利というソフトが増えて欲しいのだ。こんなの金取るのが恥ずかしいぞ、と思うようなものでも、もしかしたらとても欲しがっている人がいるかも知れない。シェアウェアが増えて来たのは、逆にそういうソフトが減ってしまった事のバロメーターなのではないかという気がするのである。もちろん一番いいのは私が自分で作る事だ。このホームページのソフトは、多分ずっとフリーである。


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