プレインストールなんていらない


 どうも、どこのメーカーだったかはっきりしないのだが、最近読んだコンピューターの広告に、こんなのがあった。曰く、

    (我がメーカーのこの機種が)イチオシの理由その1、初めから使えるソフトがたくさんついている
 内容がこの通りの文章だったかとか、ソフトの数が30だったか50だったかははっきりしないが、この際それは本題とは関係ない。はっきり覚えているのは、これが「その1」だったということだ。それで確か「その2」も、何かプレインストールに関する自慢だったと思う。「その3」になって、ようやく本体の性能についての話題に移るのである。
 一体自分はコンピューターをいくつ買ったのだろう。初期の16ビットマシンから始まって、日進月歩するOS群や各種アプリケーション、その性能に合わせてこちらも機械を強化していかなくてはならない。それはそれで、この世界に足を踏み込んだらある程度覚悟しなくてはならないのだろう(本当はこれにも議論の余地はある。MS−DOSが消えるということが盛んに噂されているが、例えば小説などのただ長い日本語を書くだけの時に、WINDOWSなんて本当にいるのか。もしかすると8ビットマシンで充分かも知れない。実はこの文章はVzで書いている)。ただ、いつのころからか始まった「プレインストール」という制度には本当に頭に来る。これは一見コンピューターを使い易くしているようでいて、実はとんでもない困ったやり方だからだ。

 まず第一に、コンピューターを買い替えてこの手のソフトにでくわした人なら誰でも思っていることだろうが、何だか無駄な金を払っているような気がするのである。ちゃんと計算したことはないのだが、あのプレインストールのソフトの値段だけで、何万円かは行ってしまいそうな気がする。もちろん、ああいうものはまとめ買いするといくらか割引されるものだから、まともにその値段が加算されてはいないのだろうが、それにしてもプレインストールがなかったらいくら安くなるのだろう。私はWINDOWS3.1のライセンス料を、3.0からのバージョンアップとかを含めて少なくとも5つは払っているはずである。それと一緒に入っていたソフトが自分には用のないものだった時など泣くになけない。いつかは使うこともあるのかと思うが、そのうちハードディスクが手狭になってきて結局削除することになる。しかも、ほとんどのプレインストールソフトは、ハードディスクに入れればそれで事足れりで、CD−ROMもフロッピーディスクもついていないのである。
 そう、プレインストール・マシンには、どうしてそのソフトのオリジナルのディスクがつかないのだろう。あやまって消してしまった時など、バックアップをとっておかなければどうしようもない。特に私は、ハードディスクの空き容量が慢性的に不足するので、不要ファイルの削除を日課にしているくらいだ。ほとんどのWINDOWSソフトは、たとえカスタムインストールでも絶対に使わないファイルを大量に送り込んで来る(WINDOWS’95のインストール後、削除しても差し支えないファイルが10〜20メガバイトはあることを、あなたは御存じだろうか)。それを試しに削除してみて、不具合が生じたら再びCD−ROMから引っぱり出す。こんな簡単なことが、プレインストールだと出来ないのである。雑誌の付録にすらぽんぽんついているCD−ROMを付けると、そんなに値段が変わるのだろうか。ソフトの料金はその内容に払っているのであって、媒体はそんなに高くないはずである。
 ソフトを選べないというのも何とかならないのか。「『一太郎+123』、『WORD+EXCEL』のいずれかから選べます」? なぜ「WORD+123」がないのか。場合によっては、EXCELのみでよかったりする。そもそも表計算はこの二つだけではない。そんなもの、40も50もついていることを自慢にして、何がうれしいものか。だいたいどんなソフトも、最初がただでもバージョンアップでしっかり金を取るのだ(きっと、これがプレインストールをする理由の一つなんだろな)。おまけに、ユーザー登録の際に名前を入れるソフトなど、ユーザー名に「プレインストール」などと莫迦なことが書かれていて、どうしてもなおすことが出来なかったりするのだ。

 プレインストールは必要なこともある。例えばWINDOWS’95の本体のように、前のバージョンがないとCD−ROMからインストール出来ないような場合だ。買い替えた際、前の機械からのバックアップを書き戻す為にOSの本体がいるのだから、これがハードディスクに入っているのは有り難いと思う。しかし、それならそれで、すでに95の正規ユーザーになっていることが証明できる人は割り引きに出来ないのか。いや、一番いいのはプレインストールにかかる費用と同じだけの料金を取ってもいいから、前の機械のハードディスクをそのままコピーしてくれるサービスをおくことである。もちろんこの場合、例えば98からIBM互換機の買い替えなんて人もいるだろうから、少なくとも同一メーカー内だけというのでも仕方ないかも知れないが(東芝のアップグレード・サービスは、その点賞賛に値する)。
 コンピューターは買い替えが常識になっている世界である。そのたびごとにプレインストールがあっても、ちっともうれしくない。あれは、初めてコンピューターを買う人のためだと思う。いや、そもそも初めて買う人にしても、インストールくらい自分で出来ない(あるいはやってくれる人がそばにいない)のでは、バージョンアップなどの時に困りはしないか。コンピューターはユーザーのレベルに合わせてやさしくなったりなどしていない。むしろ、やさしくなったふりをして、その実ユーザーのレベルを下げてるだけなのではないかという気さえする。
 プレインストールを廃止しろとはいわない。せめて選ばせて欲しいのだ。例えば次のようなラインナップではどうか。
  1. まったくのクリーン状態
  2. OSのみのバンドル
  3. 今までと同じようなプレインストール
  4. 別枠で、ユーザーが持っている現在の状態のコピー
 最初に出て来た「イチオシの理由」のメーカーは、もしかして本体の性能に自信がないのだろうか。基本的にインテルとマイクロソフトの釈迦の手の上から出られない限り、他メーカーとの差別化はオマケではかるのしかないのかも知れない。それにしても、プレインストールについては、そろそろ考えるべき時期に来ているのではないかと思うのである。


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